【消えた音と夜を過ごす】トレンツ・リャド『ロルカの詩III』シルクスクリーンのご紹介

ご来館ありがとうございます、やまアートミュージアム館長の山本です。

やまアートミュージアムは、私が運営するネットショップ『やまアートギャラリー』の魅力をご紹介するオンラインミュージアムです。

本日も心に残る一枚をお届けします。

トレンツ・リャド(J. Torrents Lladó)の『ロルカの詩III』は、世界限定300部のシルクスクリーン作品です。深い青緑の画面に黄緑の光が窓のように開き、その上下にはスペインの詩人ロルカの詩『ペテネーラの死』の最後の四行が手書きで刻まれています。本作は現在ご用意のある在庫ではなく、ご希望を伺ってからお探しする『専属お探し』作品として承っています。

この記事でわかること

  • トレンツ・リャド『ロルカの詩III』の基本情報(世界限定300部・サイン有り・64×64cm・シルクスクリーン)
  • 画面に書き込まれた四行の正体(ロルカの詩『ペテネーラの死』末尾)とその意味
  • 「ベラスケスの再来」と呼ばれた画家リャドの歩みと、この三部作の位置づけ
  • 青緑に青緑を刷り重ねるシルクスクリーンの難しさと、色が時間で変わる見え方
  • この作品に合う額装3パターンと、飾ったときの空間イメージ
  • 『専属お探し』の仕組み(無料リクエスト・無保証でお探しします)とサインの正直な開示

トレンツ・リャド『ロルカの詩III』シルクスクリーンの全体像

本日のご紹介作品

本日ご紹介する作品は、トレンツ・リャド氏の『ロルカの詩III』という作品です。

深い青緑の闇のまん中に、黄緑の光がぽっかりと窓のように開いている。その手前で、藍と紫の花が声もなく立ち上がっている。

音が消えたあとに、光だけが残っている。そんな一枚です。

正直に言うと、初めてこの絵を見たとき、絵の上に書かれた手書きの文字から目が離せませんでした。読めないはずの文字なのに、なぜか音として聞こえてくる気がしたんです。

今日この作品を知っていただけたら、「絵に文字が書いてある」という以上のことが、この画面で起きていると気づいていただけると思います。

なお、この作品はいま手元にある在庫ではなく、やまアートギャラリーで『専属お探し』として承っている一枚です。すぐのご用意はできませんが、ご希望を伺えれば、あなたの専属としてお探しします。▶ 作品ページはこちら

ベラスケスの再来と呼ばれた画家

トレンツ・リャド(J. Torrents Lladó/1946-1993)は、地中海の光を生涯かけて追いかけたスペインの画家です。

バルセロナ近郊のバダロナに生まれ、バルセロナのサン・ジョルジ美術学校で絵を学びました。

1968年、二十代のはじめに地中海に浮かぶマヨルカ島のパルマへ渡り、そこにアトリエを構えます。光と影のあわいで対象の『気配』をすくい取るその画風から、「ベラスケスの再来」と評された画家です。

1988年にはパリで『パーソナリティ・オブ・ザ・イヤー』を受章し、1990年には日本で初の個展を開きました。シルクスクリーンという版画の仕事を世に出しはじめたのも、この時期のことです。

そして1993年、47歳という若さでこの世を去りました。

その画家が、庭でも花でもなく、一編の詩に向き合ったとき生まれたのが、この一枚です。

数字で見る『ロルカの詩III』

まず、この作品の基本情報を整理しておきます。

  • 作家:トレンツ・リャド(J. Torrents Lladó)
  • タイトル:ロルカの詩III
  • 技法:シルクスクリーン
  • エディション:世界限定300部
  • サイン:サイン有り
  • サイズ:縦64cm × 横64cm

きっちりとした正方形の画面です。

一点だけ、正直にお伝えしておきたいことがあります。本作は『ロルカの詩』I・II・IIIという三部作のひとつで、市場に現れる個体には、遺族によるサインが入っているものが確認されています。

そのため当店では「直筆サイン」とは書かず、「サイン有り」とだけ記しています。お探しして確保した一枚のサインの形と状態は、お迎えいただく前に必ず確認してお伝えします。

限定300部。コレクターとして正直に言えることがあるとすれば、三部作のうち一枚だけを探す時間は、たいてい自分が思っているより長いんですよね。

・・・ただ、数字で語れるのはここまで。この絵がなぜ心に残るのかは、画面に書かれた四行の中にあります。

画面に書かれた、四行の詩

この絵の上下には、手書きの文字が流れるように書き込まれています。

これは装飾ではありません。スペインの詩人フェデリコ・ガルシア・ロルカ(1898-1936)の詩『ペテネーラの死』の、最後の四行です。

細く尖った長い影が、
濁った地平線からやって来る。
そして、ギターの低音の弦が、
切れる。

画面の下には、詩の題名『Muerte de la petenera』と、ロルカの名が記されています。

ギターの弦が切れる音で終わる詩。そのあとに訪れるのは、音のない時間です。

リャドはその「切れたあと」を、色で描いたのだと感じられます。深い青緑は、音が吸い込まれていった夜の厚み。まん中の黄緑の光は、まだ消えきらずに残っている何かの残響。

朝、コーヒーを淹れてふと壁を見たとき、昨夜の静けさがまだそこに残っている。そういう時間を連れてくる絵なんです。

一色ずつ、夜を刷り重ねる

さらに惹かれるのは、この絵が「シルクスクリーン」という版画で刷られていることです。

どういうことか?というと、色を一色ずつ、細かな網目の版を通して刷り重ねていく技法なんですね。ハンコを何度も、寸分たがわず押し重ねていく。そんな根気の作業を思い浮かべてもらうと近いかもしれません。

この絵がやっかいなのは、青緑の上に、さらに青緑を重ねている点です。

一度でも版がズレれば、下の青が濁って、まん中の光が沈んでしまう。近い色どうしを重ねるほど、ズレは隠せなくなります。

そのうえ、画面には手書きの文字が走っている。細い白い線が一本でもかすれれば、詩は詩に見えなくなってしまう。

その積み重ねの結果、近くで見ると、青の中に緑がのぞき、藍の奥に黒がひそんでいるのがわかります。一枚の版画の中に、いくつもの夜の層が畳み込まれています。

青は夜、緑は残響

この絵は、色を「意味」ではなく「音量」で感じる一枚だと思っています。

画面のほとんどを占める青緑は、音を吸い込む色です。朝の光の下では、水面のように澄んで軽く見えます。夕方、照明を落とすと、同じ青がぐっと深くなり、部屋の音まで少し静かになったように感じられます。

一日の中で、音量つまみが回されていくような色なんです。

そして、まん中の黄緑。ここだけが、明らかに音を持っています。

暗い部屋でこの絵を見ると、この一角だけが光って見える。消えたはずの音が、光になって残っている。そう感じる瞬間があります。

手前の藍と紫の花は、色でいえば青緑と同じ家族なのに、形がはっきりしている分だけ、耳元で鳴っているように近い。

遠くの光と、近くの花。静かな絵なのに、画面の奥と手前で、聴こえ方が違う。色を聴けるという言い方がありますが、この絵はむしろ、色の遠近で音の距離を測れる一枚だと感じています。

ペテネーラという、歌のこと

もう少しだけ、詩の背景に触れさせてください。

『ペテネーラ』は、スペイン南部アンダルシアに伝わるフラメンコの歌の一形式です。ロルカはこうした民衆の歌を深く愛し、詩集『カンテ・ホンドの詩』にまとめました。『ペテネーラの死』は、その中の一編です。

カンテ・ホンドは、日本語にすると「深い歌」。ギター一本と声だけで、喜びよりも、痛みや別れをうたう歌です。

つまりこの絵は、スペインの土地に根づいた歌の記憶を、一枚の版画に閉じ込めたものだと言えます。

リャドが描いたのは、地中海の明るい光だけではありませんでした。その光の裏側にある、濃い夜も彼の絵の中にある。そのことを教えてくれるのが、この『ロルカの詩』というシリーズなのだと感じています。

この絵にはどんな額が合う?

ここからは、この作品にどんな額装が合うのか、私のおすすめを3パターンご紹介させていただきます。(お探しした一枚をお迎えいただいた『その先』を想像する手がかりとして、ご覧ください。)

光を澄ませる『ホワイト額装』

まず王道は、オフホワイトの『ホワイト額装』です。

青緑という重い色は、白い額で縁取ると、途端に軽やかな一枚の窓になります。壁の白と額の白がつながって、絵だけが空間にぽっかり浮いて見えるんですね。

リビングの、家族が自然と集まる壁に掛けるのがおすすめです。

朝の光の下では水面のように澄み、夜は照明を受けてまん中の緑がやわらかく灯る。「この字、なんて書いてあるんだろうね」そんな問いが、食卓のそばで何度も繰り返されます。

読めない文字は、答えが出ないぶん、会話が長く続くんです。

『ホワイト額装』×リビング設置イメージ

夜を深くする『インディゴ額装』

変化球のひとつめは、深い藍色の『インディゴ額装』です。

青い絵に青い額?と思われるかもしれませんが、この絵は「青が主役」ではなく「青の中の光が主役」の絵なんです。

額縁が外側の青を引き受けると、画面の青緑がむしろ明るく感じられ、まん中の黄緑がぐっと前へ出てきます。絵の外まで夜が続いているような、奥行きのある見え方になります。

カフェの、照明を落とした奥のテーブル席などにおすすめです。

昼は窓の光で静かな抽象画として、夜は間接照明の下で、席についたお客様が思わず一度は見上げる一角として。コーヒーの湯気ごしに見上げると、この絵は本当に窓のように見えます。

『インディゴ額装』×カフェ設置イメージ

文字を立たせる『ブラック額装』

もうひとつは、引き締まった黒の『ブラック額装』です。

黒い額は、画面の中のいちばん暗い部分と手を結びます。すると、白い手書きの文字と、まん中の黄緑の光だけが浮かび上がってくるんですね。

書斎や応接室の、一枚だけを掛ける壁におすすめです。

実は私自身、黒い額は絵を重くすると思い込んでいた時期がありました。ところが暗い色調の作品に合わせてみると、重くなるどころか、画面の中の光の量が増えて見えることに気づいてから、印象が変わりました。

昼は静かに沈み、夜はスポットライトの下で詩の一行が読めそうなほど立ち上がる。一日の終わりに、椅子に座って眺めたくなる額装です。

『ブラック額装』×応接室設置イメージ

まとめ

深い青緑の夜と、そのまん中に残る黄緑の光。そして、その上を流れていく四行の詩。

この絵が連れてくるのは、音が消えたあとに残る光です。

ギターの弦が切れて、歌が終わって、それでも部屋に何かが残っている。その残り方は、そばで暮らし、迎え入れた人だけが知る顔だと思います。

この『ロルカの詩III』は、いま手元にある一枚ではありません。世界限定300部。名品は、ある日ふいに、たいてい一度きり市場に現れます。

だからこそ、先にご希望を伺えたときに初めて、その一枚が現れた瞬間に「あの方のためのロルカだ」と気づき、確保してご連絡できます。

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よくあるご質問

この作品はすぐに購入できますか?

いいえ。本作は在庫ではなく『専属お探し』作品です。ご希望を伺ってから、当ギャラリーが国内外のオークション・ディーラー網からお探しし、見つかり次第、状態と価格をあらためてご連絡します。数ヶ月以上お時間をいただく場合や、見つからない場合もございます。ご相談・お見積もりまでは無料です。

サインは作家本人の直筆ですか?

本作については「サイン有り」とだけお伝えしています。『ロルカの詩』シリーズは、市場に現れる個体に遺族によるサインが入っているものが確認されているためです。お探しして確保した一枚について、サインの形と状態、付属する保証書の有無を、お迎えいただく前に必ず確認してお伝えします。

画面に書かれている文字は何ですか?

スペインの詩人フェデリコ・ガルシア・ロルカの詩『ペテネーラの死』の、最後の四行です。詩集『カンテ・ホンドの詩』に収められた一編で、画面下部には詩の題名『Muerte de la petenera』とロルカの名が記されています。

額装は選べますか?

はい。お迎えいただく際は、あなた専用の新品額装にてご用意し、額装のご相談も承っております。本記事の3パターンのように、お部屋に合わせてご提案いたします。

送料はかかりますか?

お探しした作品をお迎えいただく際の配送方法・送料は、確保時に作品の状態・サイズとあわせてご案内いたします。安全な梱包で丁寧にお届けします。