【静かな芯を部屋に置く】トレンツ・リャド『ライの薔薇』シルクスクリーンのご紹介
ご来館ありがとうございます、やまアートミュージアム館長の山本です。
やまアートミュージアムは、私が運営するネットショップ『やまアートギャラリー』の魅力をご紹介するオンラインミュージアムです。
本日も心に残る一枚をお届けします。
トレンツ・リャド(J. Torrents Lladó)の『ライの薔薇』は、1994年制作・71×71cmのシルクスクリーン作品です。原題の『L'Hay』は、世界で最初に薔薇だけのために造られた庭があるパリ南郊の町ライ=レ=ローズを指します。本作は在庫ではなく、ご希望を伺ってからお探しする『専属お探し』作品として承っています。
この記事でわかること
- トレンツ・リャド『ライの薔薇』の基本情報(1994年・シルクスクリーン・71×71cm・サイン有り)
- 原題『L'Hay』が指す庭の正体と、1894年に始まった世界初の薔薇だけの庭の来歴
- 絵の奥の格子と中央の白い石の壺が、画家の創作ではなく庭そのものの姿である理由
- 一色ずつ網目をくぐらせるシルクスクリーンの技法と、すみれ色の縁が生む色の設計
- この作品に合う額装3パターンと、飾ったときの空間イメージ
- 『専属お探し』の仕組み(無料リクエスト・無保証でお探しします)

本日のご紹介作品
本日ご紹介する作品は、トレンツ・リャド氏の『ライの薔薇』という作品です。
画面いっぱいに、薔薇と青い花がざわめいています。
紅がこぼれ、青がはじけ、葉のあいだを黄緑の光が走っていく。目がどこへ行けばいいのか、一瞬わからなくなるほどの密度です。
ところが、その真ん中に、白い石の壺がひとつ、静かに立っている。
ざわめきの真ん中の、静かな芯。それがこの一枚の正体だと思っています。
正直に言うと、私が最初に目で探してしまったのは花ではなく、この壺のほうでした。花の勢いに押されるたび、視線が勝手にそこへ戻ってくるんです。
今日この作品を知っていただけたら、「花の絵は賑やかなもの」という思い込みが、少しだけ裏返るかもしれません。
なお、この作品はいま手元にある在庫ではなく、やまアートギャラリーで『専属お探し』として承っている一枚です。すぐのご用意はできませんが、ご希望を伺えれば、あなたの専属としてお探しします。▶ 作品ページはこちら
世界中の庭を描きに出かけた画家
トレンツ・リャド(J. Torrents Lladó/1946-1993)は、地中海の光を生涯かけて追いかけたスペインの画家です。
バルセロナ近郊のバダロナに生まれ、二十代のうちに地中海のマヨルカ島へ渡り、パルマにアトリエを構えました。
ただ、この画家は島にこもった人ではありませんでした。
ジヴェルニーのモネの庭、パリのバガテル、そしてこの『ライの薔薇』。作品のタイトルを並べていくと、ヨーロッパの名高い庭をひとつずつ訪ね歩いた足跡が浮かび上がってきます。
1988年にはパリのジャーナリスト協会から「パーソナリティ・オブ・ザ・イヤー」を贈られました。スペイン人の美術家としては、ミロ、ダリに続く三人目です。
その画家が、薔薇のためだけに作られた庭の前に立ったとき、生まれたのがこの一枚です。
数字で見る『ライの薔薇』
まず、この作品の基本情報を整理しておきます。
- 作家:トレンツ・リャド(J. Torrents Lladó)
- タイトル:ライの薔薇(原題 L'Hay)
- 技法:シルクスクリーン
- 制作年:1994年
- サイン:サイン有り
- サイズ:縦71cm × 横71cm
縦横ぴたりと71cm。正方形という、絵にとってはかなり珍しい画面です。
四隅のどこからも同じ距離に中心がある。だからこそ、まん中の石の壺が芯として効いてきます。
コレクターとして正直に言えることがあるとすれば、リャドの庭ものは「次に出てきたら考えよう」が通用しない作品群なんですよね。
・・・ただ、数字で語れるのはここまで。この庭がどこの庭なのかを知ると、絵の見え方が変わります。
世界でいちばん最初の、薔薇だけの庭
原題の『L'Hay』は、パリの南およそ8キロにある町、ライ=レ=ローズのことです。
ここには、世界で最初に薔薇だけのために造られた庭があります。
百貨店ボン・マルシェで財を成したジュール・グラヴロー(Jules Gravereaux)という人物がいます。彼が1892年にこの地の屋敷を買い、1894年から薔薇を集めはじめました。
やがて造園家エドゥアール・アンドレ(Édouard André)を招きます。そうして完成したのが、薔薇以外の花を植えないという、当時としては常識外れの庭でした。
薔薇はただ地面に植えられたのではありません。トレリスに這わせ、アーチに巻きつけ、鉢や石の壺に仕立てて、立体として見せたのです。
絵の奥に格子が組まれ、まん中に白い石の壺が据えられているのは、画家の思いつきではなく、この庭そのものの姿なのだと思われます。
庭の評判はやがて町の名前を変えました。1914年、町は正式に「ライ=レ=ローズ(薔薇のライ)」と改名しています。
花に名前を譲った町の、その中心にある庭。そう知って絵を見返すと、ざわめきの密度が、ただの賑やかさではなくなります。
朝、コーヒーを淹れてふと壁を見たとき、パリ郊外の庭の一角が、部屋の中に立ち上がる。そういう連れ出し方をしてくれる絵なんです。
網の目をくぐらせて、一色ずつ
この絵が「シルクスクリーン」という版画で刷られていることにも触れておきます。
どういうことか?というと、細かな網目の版に色をのせ、その目をくぐらせて紙に押し出していく技法なんですね。
網戸ごしに絵の具を押し出す、と言うと近いかもしれません。それを色の数だけ、同じ位置で繰り返します。
一度でも版がずれれば、花びらの縁も、格子の線も濁ってしまう。
その一色ずつの積み重ねが、リャドの筆が置いた色の層を写し取っています。
だから近くで見ると、紅い薔薇の中に白とオレンジがのぞき、青い花の足元に紫がひそんでいるのがわかります。
ここでひとつ、事実として申し添えておきたいことがあります。
リャドが世を去ったのは1993年。この版が刷られたのは1994年です。
つまり本作は、画家本人がもうこの世にいない時間に、彼の遺した絵から起こされた一枚ということになります。
版画は、原画の劣化版ではありません。作者の表現を、余さず、より多くの壁へ届けるために選ばれたもうひとつの完成形です。
その届け方があったからこそ、1993年で止まったはずの光が、いまも新しい部屋に掛けられている。そう考えると、この技法の意味が少し変わって見えてきます。
すみれ色の縁と、黄緑の出口
この絵でいちばん不思議なのは、画面の縁にすみれ色が塗り残されていることです。
まるで紫の窓枠ごしに庭を覗いているように見える。絵の中にもうひとつ額縁がある、という構えになっています。
そのすみれ色は、朝の光ではやわらかく白けて、窓辺の空気のように軽い。夕方に照明を落とすと、一転して深い藍を含み、庭の外側がすっと暗くなります。
外側が沈むぶん、奥の黄緑の光だけが残って、庭の出口がぽっかりと明るいまま浮かび上がる。一日の中で、絵の中に夕暮れが訪れるような色の設計です。
そして花の色は、紅と青が互いに譲りません。赤がせり出し、青が引く。色がぶつかって、画面に小さな勢いが生まれます。
その勢いを受け止めているのが、まん中の白い石の壺です。
冷たい石の白は、目が休むための場所。賑やかな花の中にひとつだけ、呼吸を置ける余白があるんです。
この絵は、眺めるというより、耳を澄ます一枚だと感じています。花のざわめきの向こうに、水音のような静けさが一本通っている。
この絵にはどんな額が合う?
ここからはこの作品にどんな額装が合うのか、私のおすすめを3パターンご紹介させていただきます。(お探しした一枚をお迎えいただいた「その先」を想像する手がかりとして、ご覧ください。)
庭を広げる『ホワイト額装』
まず王道は、オフホワイトの『ホワイト額装』です。
画面の縁のすみれ色を、白い額縁がそっと受け止めてくれるので、絵と壁の境目がやわらかくほどけます。リビングの、家族が自然と集まる壁におすすめです。
朝は窓からの光を受けて庭全体が軽くなり、夜は照明の下で紅い薔薇だけが濃く残る。「この絵、夜のほうが花が多く見えるね」。食卓のそばで、そんな言葉が出てくる一枚になります。

窓枠をもう一枚ふやす『ラベンダー額装』
変化球のひとつめは、淡い藤色の『ラベンダー額装』です。
紫の絵に紫の額?と思われるかもしれませんが、この作品はもともと、絵の中にすみれ色の窓枠を持っています。その窓枠を額縁がもう一枚外側から重ねると、庭がぐっと奥へ退き、覗き込む感じが強まるんです。
カフェの、壁ぎわの落ち着いた席におすすめします。昼はコーヒーの湯気ごしに庭を眺めるように、夕方は間接照明の下で一枚の静物画として。席に着いたお客様が、注文の前にひとこと聞いてくる。そんな一角が生まれます。

石の芯を立てる『ウォルナット額装』
もうひとつは、深い胡桃色の『ウォルナット額装』です。
木の落ち着いた茶が入ると、花の紅と青の騒ぎが一段しずまり、まん中の石の壺が主役の座に戻ってきます。応接室や書斎の、一枚だけを掛ける壁におすすめです。
実は私自身、自宅用に初めて絵を選んだとき、妻と二人で額の色だけで何日も話し込みました。届いた箱を開けて、顔を近づけた瞬間のことはいまでも覚えています。
遠目には一色に見えていたところに、何色もの色が重なっていた。「これ、本当に刷ったの?」と二人で言い合ったあの驚きは、美術館の柵の向こうでは絶対に手に入らないものでした。
この絵も、近づける場所に掛けてこそ本領を出すと思います。昼は控えめに、夜は照明を集めて、部屋の芯になる額装です。

まとめ
咲きあふれる花のざわめきと、その真ん中に立つ白い石の壺。この絵が連れてくるのは、ざわめきの真ん中の、静かな芯です。
それは、そばで暮らし、迎え入れた人だけが知る顔だと思います。賑やかな壁のはずなのに、見るたびに呼吸が一つ深くなる。
この『ライの薔薇』は、いま手元にある一枚ではありません。名品は、ある日ふいに、たいてい一度きり市場に現れます。
だからこそ、先にご希望を伺えたときに初めて、その一枚が現れた瞬間に「あの方のためのライの薔薇だ」と気づき、確保してご連絡できます。
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よくあるご質問
この作品はすぐに購入できますか?
いいえ。本作は在庫ではなく『専属お探し』作品です。ご希望を伺ってから、当ギャラリーが国内外のオークション・ディーラー網からお探しし、見つかり次第、状態と価格をあらためてご連絡します。数ヶ月以上お時間をいただく場合や、見つからない場合もございます。ご相談・お見積もりまでは無料です。
サインは誰のサインですか?
個体によって異なるため、確保時にご確認のうえご案内します。リャドは1993年に世を去っており、本作の制作年は1994年です。そのため本人サインか遺族によるサインかは一枚ごとに確認が必要になります。お探しして確保した個体について、サイン・エディション・状態をあらためてお伝えいたします。
『ライの薔薇』はどこの庭を描いた作品ですか?
原題の『L'Hay』は、パリの南およそ8キロにある町ライ=レ=ローズを指します。この町には、1894年にジュール・グラヴローが造りはじめ、造園家エドゥアール・アンドレが設計した、世界で最初の薔薇だけの庭があります。絵の奥の格子と中央の石の壺は、薔薇を立体的に見せるこの庭の仕立てと一致します。
額装は選べますか?
はい。お迎えいただく際は、あなた専用の新品額装にてご用意し、額装のご相談も承っております。本記事の3パターンのように、お部屋に合わせてご提案いたします。
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