【線だけを部屋に迎える】トム・エバハート『(Who Gets) The Last Laugh 22』アクリル原画のご紹介

ご来館ありがとうございます、やまアートミュージアム館長の山本です。

やまアートミュージアムは、私が運営するネットショップ『やまアートギャラリー』の魅力をご紹介するオンラインミュージアムです。

本日も心に残る一枚をお届けします。

トム・エバハートの『(Who Gets) The Last Laugh 22』は、世界に1点だけのアクリル原画です。燃えるような赤や跳ねるような緑で知られる画家が、色を一切使わず、墨のような黒一色だけで描いています。画面には手で引かれた四角い枠と、紙の外周をまわる渦と輪の帯が描かれ、大きな顔と丸い体がそこからはみ出しています。作家の直筆サインと本物証明書が付属し、寸法は縦76cm×横56cmです。

この記事でわかること

  • 色鮮やかな『Last Laugh』シリーズの中で、本作だけが墨の黒一色で描かれている意味
  • エバハートが25フィートの壁で漫画の枠線を消し、線だけを受け継いだ出発点
  • 筆圧と速度がそのまま太さに変わる、原画にしかない一度きりの筆致の読み方
  • 紙の白と黒の線が、朝と夜で見え方を入れ替える理由
  • この作品に合う額装3パターンと、空間・時間帯別の見え方
  • 本作が『専属お探し』の一点である理由と、リクエストの出し方

トム・エバハート『(Who Gets) The Last Laugh 22』アクリル原画の全体像

① 本日のご紹介作品

本日ご紹介する作品は、トム・エバハート氏の『(Who Gets) The Last Laugh 22』です。

まず、画面を見て気づくことがひとつあると思います。

色が、ありません。

エバハートといえば、燃えるような赤や、跳ねるような緑で知られる画家です。

その画家が、墨のような黒一色だけでこの一枚を描いています。

正直に言うと、私はこの絵の前で、しばらく足が止まりました。

色という賑やかな上着を脱がせたら、こんなに速い線が下から出てくるのかと思ったんです。

紙の白は塗り残しではなく、そのまま画面の呼吸になっています。

今日この作品を知っていただくと、絵を見るときに「何色か」より先に「どんな線か」を見るようになると思います。

この作品は、トム・エバハート作品を多数ご紹介しているネットショップ『やまアートギャラリー』で、専属お探しの一点としてご案内しています。

② 世界でただ一人、線を受け継いだ画家

トム・エバハートは1952年、アメリカ・ワシントンD.C.生まれの画家です。

1970年にイェール大学の美術・建築学部へ進み、1976年に同校で大学院課程を修了しています。

その後、パリのオランジュリー美術館で研究を続けました。

つまり彼は、漫画の出身ではありません。

絵画の教育をきちんと受けてきた画家なんですね。

1980年、カリフォルニア州サンタローザのスタジオで、『ピーナッツ』の作者チャールズ・M・シュルツと引き合わされます。

そこから20年にわたる交友が始まりました。

1990年1月には、パリのルーヴル美術館で作品が展示されています。

そして1991年、シュルツとユナイテッド・メディアはひとつの契約を交わしました。

『ピーナッツ』の題材を自身の作品に使う権利を、エバハートに生涯にわたって認める内容です。

キャラクターを借りて描いている画家ではありません。

シュルツ本人から直接手ほどきを受け、生涯の権利を託された、ただ一人の画家です。

その画家が、色を全部置いて、線だけで描いた。

ここが、この作品を見るときの入口になります。

③ 数字で見る『(Who Gets) The Last Laugh 22』

  • 作家:トム・エバハート(Tom Everhart/1952- )
  • 作品名:(Who Gets) The Last Laugh 22
  • 技法:アクリル原画
  • エディション:なし(世界に1点)
  • 寸法:縦76cm × 横56cm
  • 署名:作家の直筆サインあり
  • 付属:本物証明書

まず、寸法に目を留めていただきたいです。

縦76cmは、玄関やちょっとした壁面にちょうど収まる、扱いやすい大きさです。

横に広い大作ではなく、一人で正面から向き合うために作られた縦の画面なんですね。

そして版画と違い、この作品には限定部数がありません。

750部や125部といった数字は、版画の希少性を説明するときに使われます。

けれど原画に、その数字は付きません。

1、それだけです。

版画は、作家が刷り上がりを確認して納得した一枚だけにサインを入れて世に出す、もうひとつの完成形です。

一方で原画は、たった一人のもとにしか行けません。

コレクターとして正直に言えることがあるとすれば、原画には「次の一枚を待つ」という発想が最初から成り立たないんですよね。

同じ絵がもう一度出てくる可能性が、構造上ゼロなので。

・・・ただ、希少性を数字で語れるのは、ここまでです。

ここからは、なぜこの画家が色を手放したのか。

その出発点に迫っていきたいと思います。

④ 25フィートの壁で、枠が消えた日

エバハートがシュルツの絵と本気で向き合った最初の場面は、よく知られています。

彼はスタジオの25フィート、およそ7.6メートルの壁に、シュルツの漫画を引き伸ばして貼りました。

すると、あることが起きます。

漫画のコマを囲っていた枠線が、画面から消えてしまったんですね。

残ったのは、シュルツが引いたペンの跡だけでした。

その巨大化したペンの線を、エバハートは絵具の筆跡へ翻訳していきます(出典:Tom Everhart 公式サイト作家略歴)。

つまり彼の絵は、キャラクターの形から始まったのではありません。

枠を外したときに残った線から始まっています。

1988年、それまで描いていた骨や自然のモチーフに代わって、『ピーナッツ』を主題にした絵画が彼の中心になりました。

ここでこの作品に戻ってみてください。

画面の中には、手で引かれた四角い枠が描かれています。

紙の外周には、渦と輪が連なる帯がもう一本まわっています。

つまりこの一枚には、枠が最初から二重に描き込まれているんです。

そして大きな顔と丸い体は、内側の枠から下へ、右へと、平気ではみ出しています。

25フィートの壁で枠を外した画家が、今度は自分で枠を描いて、そこから出ていく絵を描いた。

私はこの一枚を、そういう絵として見ています。

以前、当店で絵を迎えてくださったお客様から、お便りをいただいたことがあります。

待ちに待った作品を受け取り、ご主人の帰りを待って、一緒に壁へ飾りました、と。

飾ったあとに残るのは、作品そのものより、そういう時間のほうなのだと思います。

⑤ 色を止めると、線の速さが見えてくる

さきほどの「枠から出ていく」という話。

実はこれ、題名の面白さだけでなく、絵具の置き方がそう見えるように仕向けています。

まず、この絵には版がありません。

版画なら、同じ版を同じ順番で重ねれば、同じ絵がもう一度立ち上がります。

原画には、その後戻りがないんです。

線をよく見てください。

一本の線の中で、太さが均一ではありません。

始まりが太く、終わりに向かってすっと細くなっている箇所があります。

筆が紙に着いた瞬間がいちばん濃く、走り抜けるほど薄くなる。

筆圧と速度が、そのまま太さに変換されているわけです。

黒の濃さにも段があります。

しっかり黒い線の隣に、水を含んで灰色に流れた部分が残っています。

墨が紙に染み込んでにじんだところは、輪郭がぼやけて止まっています。

つまりこの画面には、速く動いた線と、止まってにじんだ線が同居しているんですね。

書道で、半紙にとめ・はね・はらいを書いたときの感じに近いです。

一度置いた線は消せませんし、上からなぞると別物になるやつです。

そして画面全体に、細かい黒い飛沫が散っています。

筆を振ったときに飛んだ跡だと見ています。

飛沫は、絵の中の出来事ではなく、描いていた部屋で起きた出来事です。

制作の現場そのものが、画面に残っているということですね。

いちばん効いているのは、線の密度の差の付け方です。

外周の帯は、渦や輪が細かく詰まっています。

中央の顔と体は、太い線数本でほとんど描き切られています。

細かいものは遠くに、粗いものは近くに見えるのが人の目の癖です。

だから外周の帯は奥へ引き、中央の大きな形はぐっと手前に出てきます。

・・・と、ここまでで、この絵が色を使わずに奥行きを作っていることがお分かりいただけたかと思います。

この奥行きに、最後に温度を付けているのが、白と黒の関係なんです。

⑥ 白がいちばん広い声で、黒がその休符になる

この絵の面積を、いちばん多く占めているのは白です。

しかも、塗った白ではありません。

紙そのものの白なんですね。

だから壁の色や照明の色を、この白はそのまま吸い込みます。

朝、自然光の入る部屋では、紙の白が青みを帯びて、黒の線がくっきり立ちます。

一日でいちばん、線が速く見える時間帯です。

出かける前に目を上げると、画面だけ先に動き出しているように感じられます。

夕方から夜、電球色の明かりに変わると、白は少しクリーム色に沈みます。

黒も真っ黒ではなくなり、焦げ茶に近い柔らかさになります。

同じ絵なのに、昼は線の絵、夜は面の絵に見えてきます。

音でたとえるなら、白は部屋の静けさそのもので、黒はそこに置かれた一音です。

音が鳴っているから静けさが分かるのであって、その逆ではないんですよね。

そして、にじみの灰色です。

黒と白のあいだを行き来した目が、最後にこの中間の階調で一度止まります。

止まった瞬間に、あの点のような目と視線が合ってしまう。

ドキッとするのは、たぶんこの順番のせいです。

黒についてもう少し触れておきます。

この黒は、影ではありません。

静けさの担当です。

色が一色も無いおかげで、画面はどれだけ線が跳ねても、決して騒がしくなりません。

書斎や寝室のように色数を抑えた部屋で、この一枚が驚くほど馴染むのは、そのためだと感じられます。

⑦ 題名に22という番号が付いているということ

この作品の題名の末尾には、22という数字が付いています。

同じ主題を、番号を変えて何度も描いているということです。

一度で言い切らず、少しずつ角度を変えて確かめていく描き方だと、私は見ています。

題名の『(Who Gets) The Last Laugh』は、日本語にすれば「最後に笑うのは誰か」です。

先に笑われた側が、最後に形勢をひっくり返して笑い返す。

そういう逆転の場面を指す英語の言い回しなんですね。

このシリーズには、赤や黄で埋めつくされた色鮮やかな作品も並んでいます。

その中に、この墨だけの一枚があります。

賑やかな仲間たちの隣で、色を持たない一枚が最後まで静かに残っている。

最後に笑うのはどちらなのか、と題名が問い返してくるようで、私はここが好きです。

飾った初日、この題名はただの札です。

半年も経つと、家の中の言い回しに変わります。

「今日は、こっちが勝ってる感じがする」

そんな一言が出るようになったら、この絵はもうその家のものになっています。

⑧ この絵にはどんな額が合う?

ここからは、この作品にどんな額装が合うのか。

私のおすすめを3パターンご紹介させていただきます。

なお、この一枚は現在ご用意のある作品ではなく、これからお探しする一点です。

ですので以下は「見つかったとき、どんな迎え方をするか」という設計図として読んでいただければと思います。

白を壁まで続ける『ホワイト額装』

リビングに向けた、いちばん素直な一案です。

この絵の主役は、線と同じくらい、紙の白です。

そこへ濃い色の額を回すと、白が額の内側で行き止まりになってしまいます。

白系の額を選ぶと、紙の白が額を通り抜けて壁の白へ続いていきます。

画面の余白と部屋の余白がつながって、絵が壁から浮かずに収まります。

外周に描かれた渦の帯も、外側が明るい分だけ、埋もれずに読み取れます。

朝、南向きの窓から光が入る時間帯には、白い額が光を拾って、黒の線がいっそう鋭く抜けます。

夜、天井の照明を落とすと、額の輪郭がぼやけて、線だけが壁に浮いて見えます。

家族が集まる壁に色の無い絵を掛けると、面白いことが起きます。

色で盛り上がらない分、みんなが形を見にいくんです。

「これ、何が描いてあるんだろうね」とソファで話が始まる。

テレビを消したあとの数分に、絵の話が残る家になります。

トム・エバハート『(Who Gets) The Last Laugh 22』『ホワイト額装』×リビングの設置イメージ

墨と同じ色で締める『ブラック額装』

書斎に向けた、作品専用カラーの一案です。

黒い絵に黒い額?と思うかもしれませんが、これがよく効きます。

額の黒は、線の黒より一段深く、艶を抑えた黒です。

同じ色で囲むと、絵の中の黒と外側の黒が地続きになって、白い紙の面だけが強く前へ出ます。

結果として、額が四角い枠ではなく、画面の外側の余白のように見えてきます。

この絵にはすでに枠が二重に描かれていますから、三本目の枠は主張しない方がいい。

そういう選び方です。

昼、書斎の落ち着いた光の中では、額が壁の陰と馴染んで、紙の白だけが明るく残ります。

夜、デスクライトを点けると、黒枠がほとんど消えて、絵が机の前に自立しているように見えます。

私自身、自宅にも絵を掛けています。

正直に申し上げると、届いてから飾る場所を決めるまでが、いちばん楽しい時間でした。

ここでもない、あそこでもないと壁を見て回って、結局いちばん長く座る場所の正面に落ち着きました。

それと、これは実際に飾ってみて分かったことなのですが、線の絵は近くで見てほしいんです。

一歩下がって全体を見るより、半歩寄って筆の速さを追う方が、この手の絵はずっと面白い。

書斎の椅子から立ち上がって、つい近寄ってしまう。

この一枚も、たぶんそういう距離の取り方になる絵だと思います。

トム・エバハート『(Who Gets) The Last Laugh 22』『ブラック額装』×書斎の設置イメージ

木の温度を足す『オーク額装』

カフェや店舗など、商業空間に向けた変化球です。

白と黒だけの画面は、遠くからでも強く目を引く一方で、空間によっては硬く見えることがあります。

そこへ木目の額を回すと、画面に無い茶色が一色だけ外から加わります。

オークの明るい木肌は、黄みを含んだ暖かい色です。

その暖かさが額の縁から内側へ効いて、墨の黒が冷たく見えるのを止めてくれます。

木目の細かい流れは、外周に描かれた渦の帯とも相性がいいです。

どちらも「手で引いた細かい線」という点で揃っているんですね。

昼、外光の入る店内では、木の額が壁や什器の木部と呼応して、絵が内装の一部のように収まります。

夕方、照明が主役になる時間帯には、オークが飴色に沈み、白い紙だけが浮かび上がります。

色物の絵が並ぶ店内で、この一枚だけが色を持っていない。

カウンター越しに「あれだけ白黒ですよね」と言われたら、その店の常連が一人増えた合図だと思います。

トム・エバハート『(Who Gets) The Last Laugh 22』『オーク額装』×カフェ空間の設置イメージ

⑨ まとめ

『(Who Gets) The Last Laugh 22』は、色という上着を脱いだあとに、線だけが残った一枚です。

25フィートの壁で枠を外した画家が、自分で枠を描いて、そこから出ていく絵を描きました。

色が無いと、絵は弱くなると思われがちです。

けれど実際には、色が無いからこそ、線の速さと迷いのなさが隠れる場所を失います。

美術館で見た絵に、その関係は生まれません。

一度きり、決められた時間、決められた距離で見て終わりです。

毎日、違う光の下で、同じ線を目で追い続けたときにだけ現れるものがあります。

それは、買った人だけが知る顔です。

そして、この一枚について正直にお伝えしておかなければならないことがあります。

本作はいま、すぐにお渡しできる状態にはありません。

原画は世界に1点だけの作品ですから、ご希望をお預かりして、これからお探しする形になります。

数ヶ月で見つかることもあれば、もっと先になることもあります。

見つからないまま終わる可能性も、正直にお伝えしておきます。

それでもリクエストをいただく意味があるのは、こういう理由です。

名品は、ある日ふいに、たいてい一度きり市場に現れます。

そのとき「どなたが探しているか」を私たちが知らなければ、目の前を通り過ぎるのを見送るしかありません。

先にご希望を伺っておくことで初めて、現れた瞬間に「あの方のための一点だ」と気づいて、確保してご連絡できます。

ご相談・ご登録は無料です。

しつこい営業は一切いたしません。

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そんなご連絡を、いつかお届けできるのを楽しみにしています。

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ご相談・ご登録は無料です。額装のご相談や、似た雰囲気の作品でというご相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

よくあるご質問

この作品は本物ですか?

はい、作家の直筆サイン入りの作品で、本物証明書が付属します。当ギャラリーはトム・エバハート作品を継続してご紹介しており、真作であることを確認したうえでご案内しています。

額装は変更できますか?

はい、額装のご相談を承っております。お部屋の壁色・照明・設置場所をお伺いしたうえで、最適な額装をご提案いたします。本記事の3案も、そのままご指定いただけます。

送料はかかりますか?

ご案内が確定した段階で、作品ごとに配送方法と送料をご案内いたします。縦76cm×横56cmの作品のため、額装の仕様にあわせて梱包・配送手段を個別に手配いたします。

この作品は、いま購入できますか?

いいえ、本作はいますぐお渡しできる状態にはありません。世界に1点のみの原画のため、ご希望をお預かりしたうえで、当ギャラリーがあなたの専属としてお探しする形になります。数ヶ月で巡り合えることもあれば、もっと先になることも、見つからないまま終わることもあります。ご相談・ご登録は無料で、しつこい営業はいたしません。

なぜこの作品には色が使われていないのですか?

本作が墨のような黒一色で描かれている理由を、作家自身が説明した資料は確認できていません。確かなのは、エバハートの出発点がシュルツのペンの線そのものだったという経緯です。彼はスタジオの壁に漫画を引き伸ばして貼り、コマの枠線が消えたあとに残った線を絵具の筆跡へ翻訳しました。色を外した本作は、その線の仕事がもっとも見えやすい一枚だと当ギャラリーは見ています。