【水面が返す緑を飾る】トレンツ・リャド『静寂の湖水』シルクスクリーンのご紹介

ご来館ありがとうございます、やまアートミュージアム館長の山本です。

やまアートミュージアムは、私が運営するネットショップ『やまアートギャラリー』の魅力をご紹介するオンラインミュージアムです。

本日も心に残る一枚をお届けします。

トレンツ・リャド(J. Torrents Lladó)の『静寂の湖水』は、サイン有り・20号大のシルクスクリーン作品です。原画には『倒れ木(静寂の湖水)』という題があり、水面へ差し出された枝は倒れた木そのもの。木が動かないため波紋がなく、水が上の緑をそっくり返しています。本作は在庫ではなく、ご希望を伺ってからお探しする『専属お探し』作品として承っています。

この記事でわかること

  • トレンツ・リャド『静寂の湖水』の基本情報(シルクスクリーン・20号大・サイン有り)
  • もうひとつの題名『倒れ木』が示す、この水面に波紋がない理由
  • 似た緑を何枚も重ねるシルクスクリーンの工程と、上の緑・下の緑の違い
  • 油彩の原画が東京都江戸川区の杉山美術館に所蔵されているという事実
  • この作品に合う額装3パターンと、飾ったときの空間イメージ
  • 『専属お探し』の仕組み(無料リクエスト・無保証でお探しします)

トレンツ・リャド『静寂の湖水』シルクスクリーンの全体像

本日のご紹介作品

本日ご紹介する作品は、トレンツ・リャド氏の『静寂の湖水』という作品です。

この絵は、目が下に落ちます。

上に茂る緑と、水に映った緑。同じ緑のはずなのに、水のほうが少し暗くて、少し柔らかい。

一本の枝が水面へ差し出され、その枝を水がそっくり描き返しています。

『水が返してくる緑』。この絵の主役は、じつは下半分にあります。

正直に言うと、初めてこの絵を見たとき、どこまでが木でどこからが水なのか、しばらく目で追っていました。

今日この作品を知っていただけたら、風景画は上半分を見るもの、という見方が少しほどけるかもしれません。

なお、この作品はいま手元にある在庫ではなく、やまアートギャラリーで『専属お探し』として承っている一枚です。すぐのご用意はできませんが、ご希望を伺えれば、あなたの専属としてお探しします。▶ 作品ページはこちら

肖像画で名を成した画家が、水辺に立つとき

トレンツ・リャド(J. Torrents Lladó/1946-1993)は、スペイン・バダロナに生まれた画家です。

9歳でバルセロナのアカデミア・バルスに通いはじめ、1961年からサン・ホルヘ高等学校の絵画科で学びました。在学中から受賞を重ね、19歳で同校の助教授に推薦されています。(出典:おいだ美術 作家略歴)

その名を国際的に知らしめたのは、風景ではなく肖像画でした。フアン・カルロス1世やモナコ公国のカロリーヌ王女、ティッセン男爵といった人々の肖像を手がけています。(出典:バダロナ市立美術館 展覧会解説)

同じ国王から、スペインの至宝と称えられた画家でもあります。

1968年にはマヨルカ島にアトリエを構え、以後この島の光を描き続けました。

人の顔を見つめ抜いた画家が、島の水辺に立ったとき。生まれたのが、この一枚です。

数字と事実で見る『静寂の湖水』

まず、この作品の基本情報を整理しておきます。

  • 作家:トレンツ・リャド(J. Torrents Lladó)
  • タイトル:静寂の湖水
  • 技法:シルクスクリーン
  • サイズ(目安):20号大
  • サイン:サイン有り
  • 体裁:あなた専用の新品額装にてご提供

リャドが日本で初めて個展を開いたのは1990年で、初のシルクスクリーンもその年に発表されています。(出典:おいだ美術 作家年譜)

つまりリャドの版画は、最初から日本の壁を想定して世に出た流れの中にあると見ています。

コレクターとして正直に言えることがあるとすれば、この手の水辺の絵は、写真で見た印象より実物のほうがずっと静かなんですよね。

・・・ただ、数字で語れるのはここまで。この絵がなぜ心に残るのかは、題名の外にあります。

もうひとつの題名は『倒れ木』

この作品には、もうひとつの呼び名があります。原画の題は『倒れ木(静寂の湖水)』。(出典:杉山美術館 所蔵作品一覧)

そう聞いてから画面を見ると、意味が変わります。

左から水面へ伸びているあの枝は、風景を横切る飾りではなく、倒れた木そのものだった。

木は水に落ちて、それきり動かない。だからこの水面には、波紋がひとつもありません。

倒れた木が水に身を預け、水がその緑を返している。その静止した交換のことを、誰かが『静寂』と呼んだのだと感じられます。

飾ってみると、この題名が効いてきます。朝、部屋の前を通り過ぎるだけの数秒でも、絵の中の時間だけが止まって見える。

急いでいる日ほど、その一角だけ速度が違って感じられるんです。

網の目から、水面を組み立てる

さらに惹かれるのは、この水辺がシルクスクリーンで刷られていることです。

どういうことか?というと、細かな網の目を張った版の上からインクを一色ずつ押し出して、紙に置いていく技法なんですね。

Tシャツにプリントを入れる工程を思い浮かべていただくと、原理はほとんど同じです。ただし色の数だけ版があり、それを寸分たがわず重ねていきます。

この絵の場合、重ねる相手はほとんど緑です。黄に寄った緑、青を含んだ緑、黒に沈んだ緑。

似た色を何枚も重ねるほど、版がわずかにずれただけで濁ります。そのうえで、白い飛沫が最後に散らされているように見えます。

近くで寄ると、緑の層のあいだから青がのぞき、白の粒が紙の上に乗っているのがわかる。

遠目には一枚の水面ですが、手前で見ると、色が何層も畳み込まれた地層になっています。

上の緑と、下の緑

この絵には、性質の違う緑が二種類あります。

上半分は、光が葉を透かして届く緑です。黄色を含んで軽く、白い抜けがいくつも開いています。

下半分は、水が跳ね返す緑です。青と黒が混ざって重く、輪郭がゆるんでいます。

同じ木から生まれた色なのに、透かした緑と、返された緑では体温が違う。

朝の光の中では、上の白い抜けがいちばん明るく飛びます。葉ずれの音が聞こえそうなほど、画面の上半分が忙しくなる。

夜、照明を落とすと、今度は上の緑が沈み、水面だけが暗い鏡として残ります。音が消えて、温度が下がる。

一日のうちに、同じ絵の中で夏の午前と晩夏の夕暮れが入れ替わります。

色を意味で読むのではなく、明るさの順番で見る。そうすると、この絵が『静寂』を名乗るために、あれだけ広い水面を必要としたのだとわかってきます。

原画は、東京の住宅街にあります

じつはこの作品の原画は、日本にあります。東京都江戸川区の杉山美術館が、油彩の原画『倒れ木(静寂の湖水)』を所蔵しています。(出典:杉山美術館 公式サイト)

リャドの原画を常設で見られる、住宅地の中の小さな美術館です。

原画は、行けば会えます。けれど原画に毎朝会うことはできません。

版画は、その差を埋めるために作者が選んだ、もうひとつの完成形だと私は考えています。

美術館では、ガラス越しに一定の距離が要ります。自宅の壁なら、鼻先まで近づいて、緑の層の重なりを覗き込める。

近づける、というのは思っている以上に大きな違いです。

この絵にはどんな額が合う?

ここからは、この作品にどんな額装が合うのか、私のおすすめを3パターンご紹介させていただきます。(お探しした一枚をお迎えいただいた『その先』を想像する手がかりとして、ご覧ください。)

光を通す『ホワイト額装』

まず王道は、白の『ホワイト額装』です。

この絵でいちばん明るいのは、葉のあいだに開いた白い抜けです。額縁に白を置くと、画面の外にもう一段明るい面ができて、その抜けが呼吸を始めます。

緑の密度が高い絵ですから、外側に軽さを足してあげると、壁の中で息苦しくならない。

リビングの、家族が自然と集まる壁におすすめです。

朝は白が光を受けて画面ごと持ち上がり、夜は照明の下で乳白に落ち着きます。

「今日はこの絵、涼しく見えるね」そんな他愛のない一言が、ソファのそばで生まれます。

『ホワイト額装』×リビング設置イメージ

水を深くする『フォレストグリーン額装』

変化球のひとつめは、深い緑の『フォレストグリーン額装』です。

緑の絵に緑の額?と思われるかもしれませんが、この絵の緑は明るい緑ではありません。下半分は青と黒を含んだ、暗さのある緑です。

そこへ同系の深緑を添えると、色がぶつからずに、水面の暗さがそのまま壁へ広がっていきます。

絵の輪郭がゆるんで、壁に窓が一つあいたように見えてくる。

カフェの、通りに面した明るいテーブル席の壁などにおすすめです。

昼はコーヒーの湯気ごしに庭の一角として、夕方は照明が落ちるほどに、その窓だけが涼しく残ります。長居したくなる席が、一つ増えます。

『フォレストグリーン額装』×カフェ設置イメージ

倒れ木の色を借りる『ウォルナット額装』

もうひとつは、深い木肌の『ウォルナット額装』です。

この絵の中で唯一、緑でも水でもないもの。それが、水面へ倒れかかった木の幹です。

額縁にその幹の色を持ってくると、画面の中の一本と外の枠が響き合って、絵の外まで森が続いているように感じられます。

応接の壁や、一枚だけを掛ける廊下の突き当たりにおすすめです。

実は私自身、木目の額は無難な選択だと思って長らく敬遠していました。自宅で一枚を木目に替えたとき、絵の中の茶色が初めて目に入ってきて、見方が変わりました。

額は作品を囲うだけでなく、作品の中の少数派の色を拾い上げてくれるんですね。

昼は自然光で木肌が穏やかに沈み、夜は照明を受けて水面だけが浮かび上がります。

『ウォルナット額装』×応接設置イメージ

まとめ

倒れた木が水に身を預け、水がその緑を返している。波紋のない水面は、そのやりとりが止まったまま続いている証拠です。

『水が返してくる緑』。それが、この絵がまとっている静けさの正体だと考えています。

そして絵そのものにも、暮らしてみないと見えてこない顔があります。朝は上の白が飛び、夜は水面だけが暗い鏡になる。

それは、買った人だけが知る顔です。

この『静寂の湖水』は、いま手元にある一枚ではありません。名品は、ある日ふいに、たいてい一度きり市場に現れます。

そのときに「どなたが探しているか」を私が知らなければ、せっかく現れた一枚も見送るしかありません。先にご希望を伺っておけたときに初めて、「あの方のための湖水だ」と気づいて確保し、ご連絡できます。

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「似た雰囲気の作品でも」「予算はこのくらいで」といったご相談も歓迎です。専属お探しサービスの詳細はこちらをご覧ください。

よくあるご質問

この作品はすぐに購入できますか?

いいえ。本作は在庫ではなく『専属お探し』作品です。ご希望を伺ってから、当ギャラリーが国内外のオークション・ディーラー網からお探しし、見つかり次第、状態と価格をあらためてご連絡します。数ヶ月以上お時間をいただく場合や、見つからない場合もございます。ご相談・お見積もりまでは無料です。

『静寂の湖水』と『倒れ木』は同じ作品ですか?

はい、同じ画題です。油彩の原画は『倒れ木(静寂の湖水)』の題で東京都江戸川区の杉山美術館に所蔵されています。(出典:杉山美術館 公式サイト)水面へ差し出された枝が倒れた木そのものであることを知ると、波紋のない水面の理由が腑に落ちます。

サインや状態は個体によって違いますか?

はい。本作はお探しリクエスト品のため、サインの状態・保存状態はお探しした個体により異なります。当ギャラリーが確保した時点で、状態と確認できた情報をお迎え前にすべてお伝えします。気になる点があれば、その段階でご遠慮なくお尋ねください。

額装は選べますか?

はい。お迎えいただく際は、あなた専用の新品額装にてご用意し、額装のご相談も承っております。本記事の3パターンのように、お部屋に合わせてご提案いたします。

送料はかかりますか?

お探しした作品をお迎えいただく際の配送方法・送料は、確保時に作品の状態・サイズとあわせてご案内いたします。安全な梱包で丁寧にお届けします。