【飾られた笑いが壁に続く】トム・エバハート『(Who Gets) The Last Laugh? 20』アクリル原画のご紹介
ご来館ありがとうございます、やまアートミュージアム館長の山本です。
やまアートミュージアムは、私が運営するネットショップ『やまアートギャラリー』の魅力をご紹介するオンラインミュージアムです。
本日も心に残る一枚をお届けします。
トム・エバハートの『(Who Gets) The Last Laugh? 20』は、世界に1点だけのアクリル原画です。画面の上半分には手で引かれた額が描かれ、その中でスヌーピーが笑っています。つまり、壁に絵が掛かっている場面を描いた絵です。下半分では黄緑と黄と青の絵具が垂れたまま止まり、描いた瞬間の重力が残されています。作家の直筆サインと本物証明書が付属し、寸法は縦76cm×横56cmです。
この記事でわかること
- 絵の中にもう一枚の絵が飾られている、この作品だけの構図の読み方
- エバハートが25フィートの壁で漫画の枠線を消し、線だけを受け継いだ出発点
- 垂れたまま止められた絵具が、奥と手前の層をつくっている仕組み
- 黄緑・黄・青の三色と紙の白が、朝と夜で見え方を入れ替える理由
- この作品に合う額装3パターンと、空間・時間帯別の見え方
- 本作が『専属お探し』の一点である理由と、リクエストの出し方

① 本日のご紹介作品
本日ご紹介する作品は、トム・エバハート氏の『(Who Gets) The Last Laugh? 20』です。
画面を開いたら、まず気づいていただきたいことがあります。
この絵の中には、もう一枚の絵が飾られています。
上半分に、手で描かれた四角い額がひとつあります。
その中で、スヌーピーが色とりどりの点に埋もれて笑っています。
つまりこれは、壁に絵が掛かっている場面を描いた絵なんですね。
正直に言うと、私はここで一度、手が止まりました。
これから壁に掛けようとしている一枚の中に、すでに壁に掛かった一枚がある。
今日この作品を知っていただくと、絵を『飾る』という行為そのものが、少し違って見えてくると思います。
この作品は、トム・エバハートの原画を多数ご紹介しているネットショップ『やまアートギャラリー』で、専属お探しの一点としてご案内しています。
商品ページはこちらです。
https://yama-art.shop-pro.jp/?pid=192978756
② 絵画の教育を受けた人が、スヌーピーを描いている
トム・エバハートは1952年、アメリカ・ワシントンD.C.に生まれた画家です。
1970年にイェール大学の美術・建築学部へ進み、1976年に同校の大学院課程を修了しています。
その後、パリのオランジュリー美術館で研究を続けました。
漫画の世界から出てきた人ではありません。
絵画の教育を正面から受けた画家が、スヌーピーを描いているということです。
1980年、カリフォルニア州サンタローザのスタジオで、『ピーナッツ』の作者チャールズ・M・シュルツと引き合わされます。
そこから20年にわたる交友が始まりました。
そして1991年、シュルツとユナイテッド・メディアは、『ピーナッツ』の題材を作品に使う権利を、エバハートに生涯にわたって認めています。
キャラクターを借りて描いている画家ではありません。
シュルツ本人から手ほどきを受け、生涯の権利を託された、ただ一人の画家です。
その画家が、額に入った一枚を画面の中に描き込みました。
ここから、この作品の見方が始まります。
③ 数字で見る『(Who Gets) The Last Laugh? 20』
- 作家:トム・エバハート(Tom Everhart/1952- )
- 作品名:(Who Gets) The Last Laugh? 20
- 技法:アクリル原画
- エディション:なし(世界に1点)
- 寸法:縦76cm × 横56cm
- 署名:作家の直筆サインあり
- 付属:本物証明書
まず寸法に目を留めていただきたいです。
縦76cm、横56cm。
横に広い大作ではなく、一人で正面から向き合うために作られた縦の画面ですね。
そして原画には、限定部数という考え方がありません。
版画であれば、750部や125部といった数字で希少性を語ることができます。
版画は、作家が刷り上がりを確認して納得した一枚にだけサインを入れる、もうひとつの完成形です。
けれど原画に付く数字は、1だけです。
コレクターとして正直に言えることがあるとすれば、原画は「次に出たら買おう」という判断が最初から成り立たないんですよね。
同じ絵が二度出てくる可能性が、構造としてゼロなので。
・・・ただ、希少性を数字で語れるのは、ここまでです。
ここからは、この画家がなぜ額に入った一枚を描いたのか。
その出発点に迫っていきたいと思います。
④ 消えた枠が、絵の中に戻ってきた
エバハートがシュルツの線と本気で向き合った場面は、よく知られています。
彼はスタジオの25フィート、およそ7.6メートルの壁に、シュルツの漫画を引き伸ばして貼りました。
すると、漫画のコマを囲っていた枠線が、画面から消えてしまいます。
残ったのは、シュルツが引いたペンの跡だけでした。
その巨大化した線を、エバハートは自分の絵具の筆跡へ翻訳していきます(出典:Tom Everhart 公式サイト作家略歴)。
1988年からは、『ピーナッツ』を主題にした絵画が彼の中心になりました。
ここで、この一枚に戻ってみてください。
枠を外すところから始まった画家が、この絵では画面の中に枠を描いています。
しかも、ただの枠ではありません。
内側には点の海に浮かぶスヌーピーの顔があり、外側には渦と輪が連なる帯がもう一本まわっています。
きちんと額装されて、壁に掛かっている状態です。
コマの枠を外して線を取り出した画家が、その線を今度は自分の手で額に入れた。
私はこの一枚を、『飾る』という行為そのものを描いた絵として見ています。
以前、当店で作品を迎えてくださったお客様から、お便りをいただいたことがあります。
待ちに待った絵を受け取り、ご主人の帰りを待って、一緒に壁へ飾りました、と。
絵が本当に自分のものになるのは、買った瞬間ではなく、壁に掛けたその瞬間なのだと思います。
⑤ 垂らしたまま、筆を止める
さきほどの「飾られている」という感じ。
実はこれ、絵具の置き方がそう見えるように働いています。
画面の下半分を見てください。
黄緑と黄と青の絵具が、上から下へ何本も垂れています。
垂れた跡が残っているということは、絵具が乾く前に画面が立っていたということです。
そして、垂れている途中で止まっています。
拭き取ってもいませんし、上から塗り重ねてもいません。
描いた瞬間に働いた重力が、そのまま画面に残っているわけですね。
版画なら、同じ版を同じ順番で重ねれば、同じ絵がもう一度立ち上がります。
原画には、その後戻りがありません。
もうひとつ、前後関係の作り方が効いています。
垂れた絵具は、手前の大きな白い姿にぶつかると、そこで途切れています。
つまり色は奥、白い姿は手前です。
そしてこの白は、塗った白ではありません。
紙そのものの白なんですね。
塗り残した場所が、いちばん手前の面として働いている。
さらに画面には、細かい黒い飛沫が散っています。
筆を振ったときに飛んだ跡だと見ています。
絵の中の出来事ではなく、描いていた部屋で起きた出来事が、そのまま残っているということです。
・・・と、ここまでで、この絵が奥から手前へ層を分けて組み立てられていることがお分かりいただけたかと思います。
垂れた色が奥、紙の白が手前、そして上半分に、額に入った一枚。
この層に温度を付けているのが、色の選び方なんです。
⑥ 緑が伸びて、青が引き締める
この絵で使われている色は、驚くほど少ないです。
黄緑、黄、そして青。
三色が縦の帯になって並んでいます。
まず黄緑です。
明るく軽い緑が上から下へ流れると、視線がゆっくり引き下ろされます。
一枚の前に立っている時間が、少しだけ長くなる色ですね。
そこへ黄が混じると、画面の温度が上がります。
日が差し込んだ瞬間の、あの明るさに近いです。
そして青が、要所で一本だけ深く落ちています。
この青が入っているおかげで、画面が甘くなりません。
黄緑と黄だけでは軽やかすぎるところに、青が重しを掛けているわけです。
朝、自然光の入る部屋では、黄緑が透けるように明るくなります。
垂れた線が窓に伝う雨だれのように見えて、画面全体が涼しくなります。
夕方から夜、電球色の明かりに変わると、黄緑は落ち着いた緑になり、黄が金色に寄ります。
青だけが色を変えずに残るので、夜のほうが画面は引き締まって見えます。
昼は水、夜は宝石。
同じ絵で、そのくらい見え方が変わります。
音でたとえるなら、垂れた三色は伸ばした音です。
笑い声そのものではなく、笑い声が消えたあとに部屋へしばらく残っている、あの余韻の部分ですね。
そして白です。
スヌーピーの白は、この画面で唯一、動かない場所です。
色が縦に流れ続ける中で、白い体だけが止まっています。
目が最後にそこへ帰ってきて、ひと息つけるようになっている。
見ていて疲れないのは、この呼吸の置き場所があるからだと感じられます。
⑦ 「最後に笑うのは誰か」と、20という番号
題名の『(Who Gets) The Last Laugh?』は、日本語にすれば「最後に笑うのは誰か」です。
先に笑われた側が、最後に形勢をひっくり返して笑い返す。
そういう逆転の場面を指す英語の言い回しですね。
そして題名の末尾には、20という番号が付いています。
同じ主題を、番号を変えて何度も描いているということです。
一度で言い切らず、少しずつ角度を変えて確かめていく描き方だと、私は見ています。
この一枚で笑っているのは、額の中の一匹です。
手前の大きな一匹は、こちらに顔を向けていません。
額の中で笑う自分と、額の外に立つ自分。
最後に笑うのはどちらなのかと、画面が静かに問い返してくるようで、私はここが好きです。
飾った初日、題名はまだただの札です。
半年も経つと、家の中の言い回しに変わります。
「今日は、中のほうが機嫌よさそうだね」
そんな一言が出るようになったら、この絵はもうその家のものになっています。
⑧ この絵にはどんな額が合う?
ここからは、この作品にどんな額装が合うのか。
私のおすすめを3パターンご紹介させていただきます。
なお、この一枚は現在ご用意のある作品ではなく、これからお探しする一点です。
以下は「見つかったとき、どう迎えるか」の設計図として読んでいただければと思います。
紙の白を壁まで伸ばす『ホワイト額装』
リビングに向けた、いちばん素直な一案です。
この絵は、面積のうえでは白がいちばん広い絵です。
そこへ濃い色の額を回すと、白が額の内側で行き止まりになってしまいます。
白系の額なら、紙の白が額を通り抜けて壁の白へ続いていきます。
垂れた黄緑と青も、まわりが明るい分だけ、くすまずに立ちます。
それと、この案にはもうひとつ狙いがあります。
絵の中に描かれた額は、手で引かれていて、線が少し曲がっているんですね。
外側に真っ直ぐな白い額を置くと、その手描きの歪みが際立ちます。
真っ直ぐな額の中に、曲がった額が入っている。
この入れ子が、いちばん素直に見えてくる組み合わせです。
朝、南向きの窓から光が入る時間帯には、白い額が光を拾って、垂れた色がいっそう透けます。
夜、照明を落とすと、額の輪郭がぼやけて、色の帯だけが壁に残ります。
家族が集まる壁にこの絵を掛けると、たいてい最初に言われることが決まっています。
「これ、絵の中にも絵があるよ」
だいたい子どものほうが先に気づきます。
そこから、テレビを消したあとの数分が絵の話に変わります。

緑を一段沈める『フォレストグリーン額装』
カフェや店舗など、商業空間に向けた変化球です。
緑の絵に緑の額?と思われるかもしれませんが、これがよく効きます。
画面の黄緑は、明るく軽い緑です。
そこへ深く沈んだ緑の額を回すと、同じ色の系統でありながら、明るさだけが大きく離れます。
すると画面の黄緑が、暗い緑の中でいちばん明るい場所として読まれるようになります。
同じ絵なのに、色が濃くなったように見えてくるんですね。
昼、外光の入る店内では、深緑が観葉植物や木部と呼応して、絵が内装の一部のように収まります。
夕方、照明が主役になる時間帯には、額がほとんど闇に沈み、垂れた黄緑と黄だけが浮かび上がります。
カウンターから見上げたときに、色の帯だけが灯って見える。
「あの絵、夜のほうが良くないですか」
そう言われたら、その店の常連が一人増えた合図だと思います。

青を拾って締める『ネイビー額装』
書斎や応接室に向けた、もうひとつの変化球です。
この絵の中で、青は一本だけ深く落ちている色です。
面積は小さいのに、画面を引き締めている大事な色ですね。
その青を額へ移してやると、画面の中の一本が孤立しなくなります。
外側に仲間がいる状態になって、青の筋が意味を持って見えてきます。
濃紺は、緑や黄の隣に置くと、その明るさを引き立てます。
暗い色を横に置くほど、明るい色は明るく見えるからです。
昼、書斎の落ち着いた光の中では、額が壁の陰と馴染んで、垂れた色だけが明るく残ります。
夜、デスクライトを点けると、紺の枠が闇に溶けて、絵が机の前に自立しているように見えます。
私自身、自宅にも絵を掛けています。
正直に申し上げると、届いてから飾る場所を決めるまでが、いちばん楽しい時間でした。
ここでもない、あそこでもないと壁を見て回って、結局いちばん長く座る場所の正面に落ち着きました。
それと、飾ってみて初めて分かったことがあります。
絵は、近くで見てほしいんです。
遠目には一色に見えたところが、寄ってみると何色も重なっていた。
そこで一時間近く動けなくなったことがあります。
美術館では、あの距離までは近づけません。
この一枚も、たぶんそういう距離の取り方になる絵だと思います。

⑨ まとめ
『(Who Gets) The Last Laugh? 20』は、絵の中にもう一枚の絵が飾られている作品です。
コマの枠を外すところから始まった画家が、その線を、今度は自分の手で額に入れました。
垂れた黄緑と青が、笑い声の余韻のように画面を縦に流れていきます。
飾られた笑いは、壁に掛けたあとも消えずに続いていく。
美術館では、その続きは見られません。
決められた時間に、決められた距離から見て、それで終わりです。
毎日、違う光の下で同じ画面を見続けたときにだけ現れるものがあります。
それは、買った人だけが知る顔です。
そして最後に、この作品の現在の状況を正直にお伝えしておきます。
この一枚は、いますぐお渡しできる在庫としてお預かりしているものではありません。
こうした原画は、ある日ふいに、たいてい一度きり市場に現れます。
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よくあるご質問
この作品は本物ですか?
はい、作家の直筆サイン入りの作品で、本物証明書が付属します。当ギャラリーはトム・エバハート作品を継続してご紹介しており、真作であることを確認したうえでご案内しています。
額装は変更できますか?
はい、額装のご相談を承っております。お部屋の壁色・照明・設置場所をお伺いしたうえで、最適な額装をご提案いたします。本記事の3案も、そのままご指定いただけます。
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絵の中に描かれている額は、何を意味しているのですか?
作家自身がこの構図の意図を説明した資料は確認できていません。確かなのは、エバハートの出発点が、漫画のコマの枠線を消して線だけを取り出す作業だったという経緯です。その画家が本作では画面の中に額を描き、その中へスヌーピーを収めています。枠を外した人が、今度は自分の手で枠をつくった。当ギャラリーは本作を、『飾る』という行為そのものを主題にした一枚だと見ています。
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