【光だまりを壁に灯す】トレンツ・リャド『静かなる水面』シルクスクリーンのご紹介

ご来館ありがとうございます、やまアートミュージアム館長の山本です。

やまアートミュージアムは、私が運営するネットショップ『やまアートギャラリー』の魅力をご紹介するオンラインミュージアムです。

本日も心に残る一枚をお届けします。

トレンツ・リャド(J. Torrents Lladó)の『静かなる水面』は、限定300部・71cm角・サイン有りのシルクスクリーン作品です。画面の上半分は垂れ下がる枝葉で塞がれているのに、いちばん明るいのは中央の水。シルクスクリーンは版で色を置く技法のため、この明るさは塗り足したものではなく、版の側で場所を空けて守り抜かれたものです。本作は在庫ではなく、ご希望を伺ってからお探しする『専属お探し』作品として承っています。

この記事でわかること

  • トレンツ・リャド『静かなる水面』の基本情報(シルクスクリーン・限定300部・71cm角・サイン有り)
  • 国や街の祝祭の公式ポスターを任された画家という、リャドのもうひとつの顔
  • 本作のエディションが1994年=作家の没年の翌年に記録されているという事実と、サインの種別について
  • 版で置けるのは色であって明るさではない、という中央の光の作られ方
  • この作品に合う額装3パターンと、飾ったときの空間イメージ
  • 『専属お探し』の仕組み(無料リクエスト・無保証でお探しします)

トレンツ・リャド『静かなる水面』シルクスクリーンの全体像

本日のご紹介作品

本日ご紹介する作品は、トレンツ・リャド氏の『静かなる水面』という作品です。

この絵は、画面の上半分がほとんど葉で塞がっています。枝が幾重にも垂れ下がり、空はところどころにしか見えません。

それなのに、いちばん明るいのは真ん中の水なんです。

光が上から降ってくるのではなく、水のところに溜まっている。

『枝の下の光だまり』。この絵は、暗がりの奥に明かりを一つ置いた絵だと感じています。

正直に言うと、初めてこの絵を見たとき、目が勝手に中央へ吸い寄せられて、しばらくそこから動きませんでした。

今日この作品を知っていただけたら、風景画の「明るさ」は空から来るとはかぎらない、という見方が一つ増えるかもしれません。

なお、この作品はいま手元にある在庫ではなく、やまアートギャラリーで『専属お探し』として承っている一枚です。すぐのご用意はできませんが、ご希望を伺えれば、あなたの専属としてお探しします。▶ 作品ページはこちら

国の祭りのポスターを任された画家

トレンツ・リャド(J. Torrents Lladó/1946-1993)は、スペイン・カタルーニャ地方のバダローナに生まれた画家です。

1961年にバルセロナのサン・ホルヘ高等学校で絵画を学び、在学中から多数の賞を受けています。(出典:正光画廊 作家略歴)

1968年にマヨルカ島へアトリエを構え、以後この島を拠点にしました。

その後の歩みは、個人の画業という枠を少しはみ出していきます。

1986年にテキサス名誉市民に選ばれ、1988年にはパリで「パーソナリティ・オブ・ザ・イヤー」に選出されました。(出典:正光画廊 作家略歴/おいだ美術 作家年譜)

1991年にはスペイン『セビリアフェスタ』の公式ポスターを、1992年にはオランダ『フロリアード1992』日本公式ポスターの記念版画を手がけています。(出典:正光画廊 作家略歴)

国や街の祝祭の顔を任される画家だった、ということです。

その画家が、誰にも見せる必要のない島の水辺に立って描いたのが、この一枚です。

数字と事実で見る『静かなる水面』

まず、この作品の基本情報を整理しておきます。

  • 作家:トレンツ・リャド(J. Torrents Lladó)
  • タイトル:静かなる水面
  • 技法:シルクスクリーン
  • エディション:限定300部
  • サイズ:71cm × 71cm
  • サイン:サイン有り
  • 体裁:あなた専用の新品額装にてご提供

この画題は『静かなる水面(マジョルカ)』とも記録されており、舞台はリャドが半生を過ごしたマヨルカ島の水辺と見られます。(出典:絵画買取価格査定 作品データ)

一点、はっきりお伝えしておきたいことがあります。

本作のエディションは1994年作として記録されており、リャドが亡くなった翌年にあたります。(出典:絵画買取価格査定 作品データ)

そのため流通している個体には、サインが『夫人サイン』『遺族(財団)サイン』と記録されているものがあります。(出典:株式会社シバヤマ 作品データ/絵画買取価格査定 作品データ)

お探しした個体のサインがどの種別かは、確保した時点で必ずお伝えします。

コレクターとして正直に言えることがあるとすれば、この手の版は、由来を隠さず教えてくれる相手から迎えるのがいちばん気持ちがいいんですよね。

・・・ただ、数字で語れるのはここまで。

画家がいなくなった年に、光だけが残った

1993年、リャドはマヨルカ島で亡くなりました。享年47。(出典:おいだ美術 作家年譜)

この『静かなる水面』が版として記録されているのは、その翌年です。

つまりこの画面の光は、描いた本人がもういない年に、紙の上へ運び直されたことになります。

そう思って見ると、水の明るさの意味が少し変わります。

葉に覆われた薄暗い場所に、光が一か所だけ残っている。その残り方が、まるで置き忘れられたもののように見えてくるんです。

そして、置き忘れられた光は、消えずにそこにあり続けます。

飾ってみると、この構図が生活の中で効いてきます。

夜、廊下の照明だけを点けて通りかかったとき、部屋の中でその一角だけが明るく見える。家の中に、小さな水辺が一つ増えたような感覚になります。

明るさは、あとから塗り足せない

さらに惹かれるのは、この光がシルクスクリーンで作られていることです。

どういうことか?というと、細かな網目を張った版の一部だけを開けておいて、そこからインクを紙へ押し出す技法なんですね。

Tシャツにプリントを入れる工程を思い浮かべていただくと、原理はほとんど同じです。

ここに、この絵ならではの難しさがあります。

版で置けるのは「色」であって、「明るさ」ではありません。

真ん中の白く光る水は、あとから明るさを塗り足して作るものではなく、そこにだけ色を置かないよう、版の側で最初から場所を空けておいたものです。

しかもその周囲は、葉と影の濃い緑が何層も重なっています。濃い側が一枚でもはみ出せば、開けておいた光の場所は、たちまち狭くなる。

そう考えると、この中央の明るさは、置いたものではなく、守り抜かれたものだとわかります。

遠目には一枚の湖面ですが、近くで寄ると、濃い緑の縁が光の輪郭ぎりぎりで止まっているのが見えてきます。

緑が三段、そして紫の縁

この画面には、性質の違う緑が三段あります。

いちばん上は、空を透かした明るい黄緑です。真ん中の岸辺は、青を含んだ深い緑。

そして水面へ落ちると、緑は輪郭を失って、細長い縞になって伸びていきます。

もう一つ見落とせないのが、画面の外周を囲う紫の筆致です。

黒ではなく紫で締めてあるので、画面の縁が硬くならず、内側の光がふわりと残る。

朝の光の中では、上の黄緑がいちばん先に起きてきます。葉ずれの音が聞こえそうなほど、画面の上半分が賑やかになる。

夜、照明を落とすと、今度は緑が沈んで、中央の水だけが薄く発光しているように見えます。

一日のうちに、木漏れ日の午前と、灯りを落とした水辺の夜が入れ替わります。音でいえば、朝は葉の音、夜は水の匂いに近い。

色を意味で読むのではなく、明るい順に目で追う。そうすると、この絵が『静かなる水面』と名乗る理由が、腑に落ちてきます。

静かなのは水ではなく、水のまわりなんです。

版が残るということ

リャドが日本で初めて個展を開いたのは1990年で、初のシルクスクリーンもその年に発表されています。(出典:おいだ美術 作家年譜)

つまりリャドの版画は、最初から日本の壁を想定して世に出た流れの中にあると見ています。

そして版画は、複製ではありません。作者が自分の表現を余さず届けるために選んだ、もうひとつの完成形だと私は考えています。

原画は世界に一枚で、たいてい誰かの家か美術館にあります。

けれど版があれば、その光は300の壁へ分かれて届く。画家がいなくなっても、光の届き先だけは増え続けるということです。

この絵にはどんな額が合う?

ここからは、この作品にどんな額装が合うのか、私のおすすめを3パターンご紹介させていただきます。(お探しした一枚をお迎えいただいた『その先』を想像する手がかりとして、ご覧ください。)

明かりを外へ広げる『アイボリー額装』

まず王道は、象牙色の『アイボリー額装』です。

この絵でいちばん大事なのは中央の明るさですから、額の側にも少し温度のある明るさを置いてあげると、光が画面の外まで続いていきます。

純白ではなく象牙色を選ぶのは、水の光がわずかに黄を含んでいるからです。白で締めると光が青く冷え、象牙色で受けると光が残ります。

リビングの、家族が自然と集まる壁におすすめです。

朝は自然光を受けて画面ごと持ち上がり、夜は照明の下でやわらかく落ち着きます。

実は私、日曜の箱根で精進池という池に立ち寄ったことがあります。道路がすぐ隣にあるのに、入った瞬間から車の音が聞こえなくなって、その一角だけが切り取られたようでした。

しばらく眺めていると、体の内側が充たされていくような感じがしたんです。

家の中にその一角を作れるかどうか。私が絵を選ぶときの基準は、たぶんあの日に決まりました。

『アイボリー額装』×リビング設置イメージ

絵の中の色を借りる『パープル額装』

変化球のひとつめは、深い紫の『パープル額装』です。

緑と水の絵に紫の額?と思われるかもしれませんが、この作品はもともと画面の外周が紫で囲われています。

つまり紫は、外から持ち込む色ではなく、作者がすでに置いている色なんです。

額縁にその紫を延長すると、絵と額の境目がほどけて、画面が壁の奥へ続いているように見えてきます。

カフェの、少し照明を落とした奥まった席の壁などにおすすめです。

昼は緑が主役の窓辺として、夜は照明が落ちるほどに、中央の水だけが静かに残ります。一人で長く座っていたくなる席が、一つ増えます。

『パープル額装』×カフェ設置イメージ

遠くの光を引き寄せる『アンティークゴールド額装』

もうひとつは、燻んだ金の『アンティークゴールド額装』です。

この絵の奥、木々の切れ間の遠景には、緑でも青でもない、あたたかい色が差しています。

画面全体で見ればごく小さな面積ですが、ここがあるおかげで、絵に奥行きが生まれています。

額縁に燻んだ金を置くと、その遠くの一点と枠が呼応して、画面の奥がもう一段深くなります。

応接室や、一枚だけを掛ける書斎の壁におすすめです。

金といっても燻んだ金ですから、光りすぎず、絵より前に出てきません。

昼は自然光で沈み、夜は照明を受けて、額と遠景の暖色が同時に灯ります。

「この絵、奥に夕方があるんだね」そんなふうに、来客の方が絵の手前ではなく奥の話をしてくださる。そういう額装です。

『アンティークゴールド額装』×応接設置イメージ

まとめ

葉に覆われた薄暗い場所に、光が一か所だけ残っている。

版で置けるのは色であって明るさではありませんから、あの明るさは、塗って作られたものではなく、守り抜かれた場所です。

『枝の下の光だまり』。それが、この絵が静けさの中に抱えているものだと考えています。

そして絵そのものにも、暮らしてみないと見えてこない顔があります。朝は上の黄緑が起き、夜は中央の水だけが発光する。

それは、買った人だけが知る顔です。

この『静かなる水面』は、いま手元にある一枚ではありません。名品は、ある日ふいに、たいてい一度きり市場に現れます。

そのときに「どなたが探しているか」を私が知らなければ、せっかく現れた一枚も見送るしかありません。先にご希望を伺っておけたときに初めて、「あの方のための水面だ」と気づいて確保し、ご連絡できます。

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よくあるご質問

この作品はすぐに購入できますか?

いいえ。本作は在庫ではなく『専属お探し』作品です。ご希望を伺ってから、当ギャラリーが国内外のオークション・ディーラー網からお探しし、見つかり次第、状態と価格をあらためてご連絡します。数ヶ月以上お時間をいただく場合や、見つからない場合もございます。ご相談・お見積もりまでは無料です。

サインは作家の直筆ですか?

個体により異なりますので、確保した時点で種別をお伝えします。本作のエディションは1994年作として記録されており、リャドが亡くなった翌年にあたります。そのため流通している個体には、サインが『夫人サイン』『遺族(財団)サイン』と記録されているものがあります。(出典:株式会社シバヤマ 作品データ/絵画買取価格査定 作品データ)お探しした一枚について確認できた事実は、お迎え前にすべてお伝えします。

『静かなる水面』と『静かなる水面(マジョルカ)』は同じ作品ですか?

はい、同じ画題です。71cm角・限定300部のシルクスクリーンとして記録されており、舞台はリャドが半生を過ごしたマヨルカ島の水辺と見られます。(出典:絵画買取価格査定 作品データ)

状態は個体によって違いますか?

はい。本作はお探しリクエスト品のため、保存状態はお探しした個体により異なります。当ギャラリーが確保した時点で、状態をお迎え前にお伝えします。気になる点があれば、その段階でご遠慮なくお尋ねください。

額装は選べますか?

はい。お迎えいただく際は、あなた専用の新品額装にてご用意し、額装のご相談も承っております。本記事の3パターンのように、お部屋に合わせてご提案いたします。

送料はかかりますか?

お探しした作品をお迎えいただく際の配送方法・送料は、確保時に作品の状態・サイズとあわせてご案内いたします。安全な梱包で丁寧にお届けします。