【重さを手放す高さに、住む】ヒロ・ヤマガタ『カイト 凧』シルクスクリーンのご紹介
ご来館ありがとうございます、やまアートミュージアム館長の山本です。
やまアートミュージアムは、私が運営するネットショップ『やまアートギャラリー』の魅力をご紹介するオンラインミュージアムです。
本日も心に残る一枚をお届けします。
本日ご紹介するのは、ヒロ・ヤマガタ(Hiro Yamagata/1948- )のシルクスクリーン『カイト 凧』(1992年・限定305部・作家直筆サイン入り)です。パリの街を下から見上げた構図で、屋根の上に上がった人々の手から、スイカやチョウの形をした凧が空へ伸びている一枚。本作はいま在庫がなく、当ギャラリーが専属でお探しする作品です(ご相談無料)。
この記事でわかること
- ヒロ・ヤマガタがどんな画家で、なぜパリの屋根を描けたのか(20代の数年間をパリで過ごした経歴)
- 記念事業のポスターで空に浮かべてきたのは気球や飛行船、本作で浮かぶのは糸でつながった凧だという違い
- 『カイト 凧』の基本情報(1992年・限定305部・縦22cm×横28cm・直筆サイン入り)
- 『ECOLE DE』『TRANSPORTAT』『ROSES』の文字から読み取れる、この絵の舞台
- ぼかしを使わず斜めの直線だけで街を組み上げる、シルクスクリーンの難所
- 強い色を並べても散らからない理由と、朝と夜で入れ替わる見え方
- この作品に合う額装3パターンと、飾ったときの空間の変化

① 本日のご紹介作品
本日ご紹介するのは、ヒロ・ヤマガタ氏の『カイト 凧』という作品です。
この絵を目の前に置くと、たいていの方が同じ動きをします。
あごが、少し上がるんです。
建物が斜めに傾いで描かれているので、見る人の首のほうが絵に合わせてしまうんですね。
正直に言うと、私は最初、この傾きを構図の遊びだと思っていました。
けれど画面をなぞっていくうちに、そうではないと気づいたんです。
この絵の中では、凧も、風船のような丸も、スイカも、帽子も、そして人までもが上へ上がっている。
街ごと、重さを手放しているんです。
今日この一枚の見どころを知っていただけたら、明るい絵の選び方が少し変わると思います。
そして、この作品には特別なご案内があります。
いまお手元にご用意できる在庫はなく、当ギャラリーが「あなたの専属」としてお探しする一枚です。
すぐのお届けはお約束できません。
ただ、ご希望を先に伺っておけば、市場に現れた瞬間にまっ先にご連絡できます。
ご相談は無料です。
まずは、この屋根の上まで一緒に上がってみてください。
② 空に何かを浮かべ続けた画家
ヒロ・ヤマガタ(Hiro Yamagata/本名 山形博導)は、1948年に滋賀県で生まれた画家です。
高校を卒業した1967年、高校の美術教師であった日本画家の椙村睦親に師事しました。
そして1972年、24歳で海を渡ります。
翌1973年にはエコール・デ・ボザール(パリ国立美術学校)の聴講生となり、同じ年、ウィーンで個展を開きました。
1974年にはサロン・ドートンヌやフランス画家協会展に出品し、1978年にロサンゼルスへ移住します。
つまりこの画家は、20代の数年間を、パリの住人として過ごしているんですね。
その後の歩みを並べてみると、ひとつの共通点が浮かび上がってきます。
1983年、気球の浮かぶ空を描いた『エアーショー』が、人類飛行200周年記念の祝典ポスターに選ばれました。
このころ確立された鮮やかな青が、のちに「ヤマガタ・ブルー」と呼ばれるようになります。
1986年には自由の女神100周年記念の公式ポスターを手がけました。
1991年には世界陸上とバルセロナオリンピックのポスター、1996年には長野冬季オリンピックの公式ポスターを制作しています。
記念の年が来るたびに、この画家は空に何かを浮かべてきたわけです。
ただ、その多くは気球であり、飛行船であり、飛行機でした。
つまり、人が乗って上がっていく機械です。
本作が刷られた1992年は、バルセロナと長野のちょうど間にあたります。
その時期に描かれたこの一枚で空に上がっているのは、機械ではありません。
地上の誰かが、糸の端を握っている凧なんです。
③ 数字で見る『カイト 凧』
まず、この作品の基本情報を整理します。
- 作家:ヒロ・ヤマガタ(Hiro Yamagata/1948- )
- タイトル:カイト 凧
- 技法:シルクスクリーン
- 制作年:1992年
- エディション:限定305部
- サイン:作家直筆サイン入り
- 画寸:縦22cm × 横28cm
- 体裁:あなた専用の新品額装にてご提供いたします
制作年とエディションは、市場に出た個体の記録によるものです。
エディション番号だけは、あえて空欄にしてあります。
本作はこれからお探しする一枚で、何番の刷りが見つかるかは、そのときにならないと分からないからです。
確保できた時点で、状態とあわせて正直にお伝えします。
コレクターとして正直に言えることがあるとすれば、305という数字は、世界中に散らばったあとでは決して多くないんですよね。
④ 屋根の上まで、みんな上がってきた
・・・ただ、数字で語れるのはここまで。
ここからは、この絵の中で何が起きているのか、その話に迫っていきたいと思います。
描かれているのは、街を見上げた一角です。
道も、地面も、人の足元も、この絵には出てきません。
画面にあるのは、屋根と、壁と、空だけなんです。
建物には手すりの付いた鉄のバルコニーが並び、屋根の上には煙突が何本も立っています。
壁には『ECOLE DE』、その下の帯には『TRANSPORTAT』と大きな文字が入っています。
画面の中央には、煉瓦の壁いっぱいに『FLO』の三文字と『ROSES』の文字が描かれた壁面広告があります。
学校があって、花屋の広告があって、通りの名残がある。
パリの、ごく普通の街角です。
面白いのは、そこから先です。
屋根の上に、人が上がってきているんですね。
黒い屋根の稜線に腰かけている人がいます。
赤いマフラーをなびかせて両手を上げている人がいて、その頭から離れた帽子が、すぐ上の空で止まっています。
そして、その人たちの手から糸が伸びています。
糸の先にあるものが、また変わっているんです。
色違いの楕円が数珠つなぎになった長い凧。
緑の縞のスイカが、丸ごとの姿で浮かんでいます。
その隣には、切ったばかりの輪切りのスイカ。
大きな羽を広げたオレンジのチョウ、緑のイモムシ、水玉のボール。
さらによく見ると、糸を持っていない人まで、壁のそばをふわふわと漂っています。
白い翼を広げた人の姿もあります。
凧なのか、浮かんでしまった人なのか。
この絵は、そこを決めてくれません。
私は、そこがこの一枚のいちばん良いところだと思っています。
飾ってみると、この「決めてくれなさ」が暮らしの中で効いてきます。
休みの日の昼下がりに前を通ると、まず青が目に入る。
そのあとで、今日はスイカを見るか、屋根の人を見るかを決めることになる。
毎回、違う場所で止まる絵なんです。
⑤ 傾けた街を、版で組み上げる
さらにこの絵がすごいのは、この傾いた街をシルクスクリーンという版画で組み上げているところなんです。
どういうことか?というと、シルクスクリーンは色ごとに版を分け、一色ずつ刷り重ねていく技法です。
型紙を当てて、その上から一色だけを通す。
それを寸分の狂いもなく、何度も繰り返していく作業だと思ってください。
ヒロ・ヤマガタは、この重ねる回数が桁外れの画家として知られています。
一般的な多色刷りが20色前後とされるなかで、100色以上を重ねた作品でセンセーションを起こした画家です。
そして本作の難所は、色数そのものよりも、境界線のほうにあります。
この絵には、ぼかしがほとんどありません。
黄色い壁と赤い庇、紫の煉瓦と水色の窓枠が、すべて一本の直線で隣り合っています。
しかも建物は斜めに傾いでいるので、その直線は縦でも横でもなく、全部が斜めなんですね。
斜めの境界は、ほんのわずかズレただけで、白い隙間になって目に飛び込んできます。
建物の角が二重に見えたら、その瞬間にこの街は崩れます。
これがどのくらいすごいか?というと、色鉛筆で塗り分けた図形の輪郭を、何十枚も重ねてぴたりと合わせるようなものです。
一方で、空のほうは反対の仕事をしています。
上のほうが濃く、雲のあたりへ向かってすっと薄くなる青。
面で塗り分けた街の上に、境目のない青を広げているわけです。
かっちり切った街と、切れ目のない空。
この対比が、街を下に、空を上に押し分けています。
版画は、原画の安い代わりではありません。
作家が自分の表現を余すところなく届けるために選んだ、もうひとつの完成形です。
だからこそ、余白の直筆サインは「基準に届いた刷りだけが世に出た」という、作家自身の合格印になるんですね。
⑥ 青が下がって、街が上がる
・・・と、ここまでで技法の話をお分かりいただけたかと思いますが、この一枚でいちばん語りたいのは、色の重さの話です。
この絵には、黄色も、朱色も、紫も、水色も入っています。
普通なら、これだけ強い色を並べるとうるさくなります。
ところが、この絵は散らかって見えません。
理由は、青の置き方にあります。
画面の上のほうの青が、いちばん濃いんです。
濃い色は重く見えますから、本来なら上が重くて不安定になるはずなんですね。
けれどその濃い青の中に、白い雲が大きく張り出しています。
白は、いちばん軽い色です。
重い青の中に軽い白が入ることで、上側が呼吸を始めて、見上げた空がふっと抜ける。
その抜けたぶんだけ、下の街の色が浮き上がって見えてきます。
ドキッとする強さではなく、肩の力が抜ける明るさです。
時間帯によって、この関係は入れ替わります。
朝、自然光が入る部屋では、青が澄んで、白い雲がくっきり立ち上がります。
画面全体が、風の出はじめた午前の空気になる。
ところが夜、照明を落とすと、濃い青と黒い屋根が静かに沈みます。
残るのは、黄色い壁と、スイカの赤と、チョウのオレンジです。
朝は「空の絵」、夜は「街の絵」。
一枚で二つの見え方を持っています。
じっと見ていると、色の音まで聞こえてくる気がします。
黄色い壁は、遠くの通りのざわめき。
白い雲は、その上を通り過ぎていく風の音です。
⑦ 名所を一つも描かないパリ
もうひとつ、見落としやすいことがあります。
この絵には、パリの名所が一つも描かれていないんです。
エッフェル塔も、凱旋門も、サクレ・クールもありません。
代わりに描かれているのは、学校の壁と、花屋の広告と、誰かの家の屋根です。
②でお話ししたとおり、この画家は20代の数年間をパリで暮らしています。
これは記録ではなく私の見立てですが、この一枚の目線の高さは、旅行者のものではないと思います。
観光で訪れた人は、名所を正面から見ます。
そこに住んだ人だけが、自分の部屋の窓から屋根を見上げて、今日は風があるな、と思うんですね。
名所を一つも置かずに、それでもパリだと分かってしまう。
この絵の自信は、たぶんそこから来ています。
⑧ この絵には、どんな額が合う?
ここからは、この作品にどんな額装が合うのか、私のおすすめを3パターンご紹介させていただきます。
窓をもう一枚つくる『ナチュラル木額装』
まずは定番の、明るい木目の額装です。
この作品に木の額をおすすめする理由は、色の相性ではありません。
役割のほうです。
この絵は、建物を見上げた構図でできています。
そこに木の枠を回すと、枠のほうが窓枠に見えてくるんですね。
壁に掛けた瞬間、その壁に窓がもう一枚増えたように感じられます。
白い額でも黒い額でも絵は成立しますが、木目にだけは、家の造作と同じ手ざわりがあります。
だから「飾った絵」ではなく「前からそこにあった窓」の顔になってくれるんです。
おすすめは、家族が集まるリビングです。
朝の光が入る時間には、木の色が光を吸って、額の存在がほとんど消えます。
夜、あかりを落とすと、今度は木目だけがぼんやり浮かんで、絵の中の空が深くなります。
前を通りかかったお子さんが立ち止まって、「このスイカ、飛んでる」と言い出す。
そこから凧を作る話になって、次の週末の予定が決まってしまう。
そういう会話が生まれる一枚です。

空をもう一段深くする『ロイヤルブルー額装』
青い絵に青い額?と思われるかもしれませんが、この作品にはあえて濃い青を合わせる案をおすすめしたいんです。
理由は、この絵の空が「一色の青」ではないからです。
上は濃く、雲に近づくほど淡い。
この絵の青には、すでに幅があるんですね。
その外側にもう一段濃い青を置くと、絵の中のいちばん濃い青が「まだ薄いほう」に変わります。
結果として、空の奥行きが一段深くなり、街の黄色や朱色が前にせり出してきます。
明るい絵なのに、部屋のほうは静かなまま。
そういう収まり方をします。
これが似合うのは、応接室や書斎です。
昼は窓の光で青が澄み、夜は間接照明の下で、ほとんど紺に沈みます。
来客がソファに腰を下ろした瞬間、視線が壁へ吸い寄せられて、「これ、どこの街ですか」と自然に口が開く。
名所が描かれていないぶん、答えるより先に、相手が絵の中を探し始める組み合わせです。

壁の黄色を連れ出す『マスタード額装』
3つめは、少し意外に思われるかもしれませんが、辛子色の額装です。
この絵の中でいちばん面積の大きい暖かい色は、右手の建物の黄色い壁でした。
その色を額のほうへ引っ張り出してやると、画面の外側にもう一枚、陽の当たる壁ができるんですね。
鮮やかな黄色ではなく、少し沈んだ辛子色を選ぶのがポイントです。
だから絵の中の黄色と競らず、青をいっそう青く見せる側に回ってくれます。
おすすめは、木のテーブルを使ったカフェやベーカリー、待合の空間です。
昼はテーブルの色と並んで穏やかに落ち着き、夜は照明を受けて縁だけが熱を持ちます。
コレクターとして自宅に絵を掛けてみて感じるのは、額を替えた瞬間に、部屋の明るさまで変わってしまうことなんです。
私自身、届いた日に飾る場所を決めきれず、壁を変えては離れて眺め直した覚えがあります。
席についたお客様が、注文したことを忘れて、しばらく絵の中の凧を目で追っている。
そんな時間を作ってくれる組み合わせです。

⑨ まとめ
凧が上がり、スイカが浮かび、帽子が飛んで、人までが屋根の上に出てくる。
地面は一度も描かれません。
街ごと、重さを手放しているんです。
だからこの絵の前では、見ている側のあごも自然に上がります。
朝は空の絵、夜は街の絵。
そして毎回、違うところで目が止まる。
それは、買った人だけが知る顔です。
この『カイト 凧』は、いまはどこかで、次の持ち主を静かに待っている一枚です。
名品は、ある日ふいに、たいてい一度きり市場に現れます。
だからこそ、先に「私はこの絵を待っています」と教えておいていただくことで、当ギャラリーはその瞬間にまっ先にご連絡できます。
この作品を、あなたのためにお探しします。
ご相談は無料です。
しつこい営業は、いたしません。
すぐのご用意はお約束できませんが、あなたの一声があって初めて、この一枚は「あの方のための空だ」と、探し当てることができます。
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よくあるご質問
この作品は本物ですか?
はい、ヒロ・ヤマガタの本物のシルクスクリーンです。お探しした個体をご案内する際は、一点ごとに直筆サインの有無・エディション番号・状態と真贋を確認したうえでお伝えします。
いますぐ購入できますか?
いいえ、本作はいま在庫がなく、当ギャラリーが専属でお探しする「お探しリクエスト」の作品です。ご希望を伺ってから国内外のネットワークでお探しし、見つかり次第、価格とともにご連絡します。数ヶ月かかることも、見つからない場合もございますが、ご相談・調査は無料です。
限定305部のうち、何番の作品が届きますか?
エディション番号は、お探しした個体によって異なります。本作は1992年に305部で刷られた作品で、番号の指定は承れませんが、確保できた時点で番号と状態をあわせて正直にお伝えします。
額装は変更できますか?
はい、額装のご相談を承っております。本記事でご紹介した3案以外でも、飾る部屋の壁色や家具に合わせてご提案いたします。お探しした個体をご案内する際に、あわせてご相談ください。
送料はかかりますか?
国内は送料無料でお届けしております。額装済みの作品を、専用の梱包でお送りします。
縦22cm×横28cmは、壁に飾るには小さすぎませんか?
額装すると見え方が変わります。本作の画寸は縦22cm×横28cmですが、マットと額縁を回すと外寸はおおよそ縦40cm前後になり、玄関やトイレの壁、廊下の突き当たり、机の上の壁面といった「近くで見る場所」にちょうど収まります。もともと細部の描き込みが密な作品ですので、離れて眺める大作より、立ち止まって覗き込める距離に掛けるほうが本領が出ます。
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