【爆ぜる一瞬と暮らす】トム・エバハート『Don't Taze Me Bro』アクリル原画のご紹介
ご来館ありがとうございます、やまアートミュージアム館長の山本です。
やまアートミュージアムは、私が運営するネットショップ『やまアートギャラリー』の魅力をご紹介するオンラインミュージアムです。
本日も心に残る一枚をお届けします。
『Don't Taze Me Bro』は、トム・エバハートが色を一切使わずに描いた縦横61cmのアクリル原画です。エディションのない世界に1点のみの作品で、作者の直筆サインと本物証明書が付属します。中心にスヌーピーの顔、そこから放射状に筆が爆ぜる構図が最大の特徴です。
この記事でわかること
- 原色で知られるエバハートが、この一枚で色を捨てている理由
- タイトル『Don't Taze Me Bro』が指す、2007年のアメリカの出来事
- シュルツの線を7メートル半の壁に拡大したという、制作の出発点
- 朝は笑い、夜は抽象画に変わる白黒の見え方
- この作品に合う額装3案と、設置空間ごとの過ごし方

① 本日のご紹介作品
本日ご紹介する作品は、トム・エバハート氏の『Don't Taze Me Bro』という作品です。
画面の真ん中で、何かが爆ぜています。
放射状に飛び出した筆の束。
そのまわりに、点々と散った黒いしぶき。
渦の中心をよく見ると、丸い鼻と、ふたつの目があります。
スヌーピーです。
正直に言うと、初めてこの絵を見たとき、私は数秒のあいだ息を止めていました。
色が、一切ないんです。
エバハートといえば、目の覚めるような原色と飛び散る絵具で知られる画家です。
その人が、色を全部置いてきた。
残っているのは、黒と白と、その間のグレーだけ。
だからこの絵の前では、逃げ場がありません。
爆ぜた一瞬が、そのまま画面に貼りついています。
今日この作品を知っていただけたら、絵の『静けさ』と『うるささ』は同じものの裏表なんだと、たぶん感じていただけると思います。
この作品は、私が運営するネットショップ『やまアートギャラリー』で取り扱い中です。
商品ページのURLは記事末尾に記載しておりますので、実物の細部もぜひご覧ください。
② 世界でただ一人、あの犬を描ける画家
トム・エバハートは1952年、アメリカのワシントンD.C.に生まれた画家です。
イェール大学の美術・建築学部で学び、1976年に大学院課程を修了しています。
その後はパリのオランジュリー美術館でも研究を続けました。
つまり出自は、正統な西洋絵画の側にいた人です。
その彼が『ピーナッツ』の原作者チャールズ・シュルツと出会ったのが1980年。
カリフォルニア州サンタローザにあったシュルツのスタジオでした。
そして1991年、シュルツとの間で法的な取り決めが交わされます。
エバハートが『ピーナッツ』の題材を使って作品を制作してよい、しかも彼の生涯にわたって、という内容です。
シュルツから直接教えを受け、かつ正式な許諾を持つ唯一のファインアーティスト。
それがこの人の立ち位置です。
1990年にはルーヴル美術館でも作品が展示されています。
漫画のキャラクターを描きながら、美術館の側から評価されている。
その矛盾のような場所に、40年近く立ち続けている画家です。
③ 数字で見る『Don't Taze Me Bro』
- 作者:トム・エバハート(Tom Everhart)
- タイトル:Don't Taze Me Bro
- 技法:アクリル原画
- エディション:なし(世界に1点のみ)
- サイズ:縦61cm × 横61cm
- 署名:作者の直筆サインあり
- 付属:本物証明書
- 体裁:額装済み
- 状態:新品未使用(提携ギャラリー保管品・コレクター未通過)
注目していただきたいのは、エディションの欄です。
『なし』と書かれています。
版画のように刷られた1枚ではなく、画面に直接、筆で描かれた1点ものだということです。
同じものが世界のどこにも存在しません。
コレクターとして正直に言えることがあるとすれば、原画は『次の機会』という言葉が通用しない世界です。
・・・ただ、数字で語れるのはここまで。
ここからは、このタイトルが何を指しているのか。
その話に入っていきたいと思います。
④ アメリカ中が覚えてしまった、たった一言
『Don't Taze Me Bro』を直訳すると、「スタンガンを当てないでくれよ、兄弟」となります。
奇妙なタイトルですよね。
これはアメリカでは、ほとんどの人が聞き覚えのある一言です。
2007年9月17日、フロリダ大学で開かれた憲法記念日のフォーラムでの出来事でした。
ジョン・ケリー上院議員の講演の場で、一人の学生が質問に立ちます。
やりとりがもつれ、その学生は警官に取り押さえられ、テーザー銃を向けられました。
そのとき彼が叫んだのが、「Don't tase me, bro!」という言葉です。
映像はネット上で一気に広がりました。
イェール引用句辞典は、この叫びを『2007年で最も記憶に残る言葉』に選んでいます。
ニュー・オックスフォード米語辞典も、この年の『今年の言葉』のひとつに「tase / taze」を挙げました。
ひとりの学生が叫んだ短い悲鳴が、その年のアメリカを象徴する言葉になってしまったわけです。
ここからは私の見立てです。
エバハート本人がこの出来事について語った記録を、私は見つけられませんでした。
ですので、断定はいたしません。
ただ、この絵を見ていると、どうしてもあの言葉が重なります。
画面の中心から外へ向かって、すべての筆が一斉に弾け飛んでいる。
電流が走った瞬間の身体のように見えるんです。
そして中心にいるのは、世界一有名な、のんきな犬です。
笑ってしまうほどの茶目っ気と、ひやりとする反骨心が、同じ画面の上で同居している。
商品ページにも書いたとおり、見るたびに思わず笑みがこぼれる一枚です。
その笑いの下に、ちょっとした痛みが隠れている。
だからこの絵は、飾ってから長持ちします。
朝、コーヒーを淹れながら見れば、ただ元気な犬の絵に見える。
夜、仕事を終えて座り直すと、今日の自分が叫びたかったことのように見える。
そういう二面を持った絵なんです。
⑤ 色を全部捨てたら、線だけが残った
さらにすごいのは、この『爆ぜる一瞬』が、絵具の勢いだけで作られているわけではないところなんです。
エバハートがシュルツの線と出会ったときの話が残っています。
彼はシュルツの漫画を、およそ25フィート、7メートル半ほどの壁いっぱいに引き伸ばしました。
そこまで大きくすると、コマの枠が視界から消えます。
残るのは、シュルツが引いた線そのものだけ。
エバハートはその線を、自分の絵画の言葉に翻訳していきました。
これがどのくらいすごいか?というと、漫画を『拡大してなぞった』のではなく、線の運動だけを抜き出して自分の筆に乗せ替えた、ということです。
本作で色が無いのは、たぶんその延長線上にあります。
色という情報を外すと、線の速さと圧力しか残りません。
日本の方には、習字を思い出していただくのが早いと思います。
筆に墨を含ませて、一息で引く。
途中で止まれば滲むし、迷えば線が痩せる。
やり直しは効きません。
この絵の筆の伸び方を見ていると、塗り重ねて直した跡がほとんど見当たらないんです。
アクリル絵具は乾きの速い画材ですから、なおさら躊躇の余地がない。
放射状に走る一本一本が、それぞれ一回の動作で置かれている。
太いところは筆が寝て、先端にいくほど毛が割れて、かすれて終わる。
その『終わり方』が全部ちがう。
だから画面が、止まって見えないんです。
・・・と、ここまでで、この絵がなぜ動いて見えるのかはお分かりいただけたかと思います。
この動きを最大限に引き出しているのが、実は色の無さなんです。
⑥ 黒は電流、白は間(ま)
ここからは、白と黒の話をさせてください。
多くの方は、白い部分を『背景』だと思って見ます。
でもこの絵では、白は背景ではありません。
音が鳴っていない時間、つまり『間』です。
黒い筆が一斉に飛び出すから、その外側にある白が、急にしんとして感じられる。
そして黒。
エバハートのこの黒は、影ではないと私は見ています。
影は物の下にできるものですが、この黒は物の外へ出ていこうとしています。
だから『電流』という言葉のほうが近い。
面白いのは、時間帯で見え方がはっきり変わることです。
朝の光の下では、白が光を吸って明るく張り、黒の線が細く、軽やかに見えます。
線の一本一本が分かれて見えるので、絵全体が『笑っている』印象になります。
ところが夜、照明を一段落として見ると、まるで別の絵になります。
白が奥へ引いて、黒がむくむくと太る。
散ったしぶきが、暗がりの中で急に主張しはじめます。
昼はスヌーピーの絵、夜は抽象画。
一枚で二度おいしい、という言い方は品がないかもしれませんが、実際そうなんです。
もうひとつ。
中心の、鼻と目のまわりに残された白をご覧ください。
あそこだけ、筆が入っていません。
嵐の真ん中に、ぽっかりと穴が空いているような感じです。
見ている側の呼吸が、自然とそこに着地します。
だからこの絵は、あれだけ騒がしいのに、見ていて疲れないんですね。
そして質感の話も少しだけ。
これは印刷ではなく原画ですから、絵具そのものが画面の上に乗っています。
近づくと、筆の毛が割れたところに、わずかな盛り上がりと乾いたザラつきが見えます。
指で触れたら音が鳴りそうな乾き方です。
写真では絶対に伝わらない部分で、ここは実物を持った方だけの特権だと思います。
⑦ 色を使わない仕事を、彼は20年近く続けてきた
補足として、ひとつ事実をお伝えしておきます。
エバハートの白黒作品は、この一枚だけの思いつきではありません。
2016年、ビバリーヒルズのムーシュ・ギャラリーで『RAW: Black and White Works From 1998 – 2016』という展覧会が開かれました。
彼のキャリアで初めて、白黒の作品だけを集めた展覧会です。
1998年から2016年までの30点が並び、そのうち15点はこの展覧会のために新しく描かれたものでした。
キャンバス、紙、生の木材、パネルなど、支持体もさまざまだったと記録されています。
つまり白黒は、彼にとって『たまにやる実験』ではなく、20年近く走り続けてきたもう一本の本線だということです。
色鮮やかなエバハートを知っている方ほど、この静かな系譜に出会うと驚かれます。
⑧ この絵にはどんな額が合う?
ここからは、この作品にどんな額装が合うのか、私のおすすめを3パターンご紹介させていただきます。
線を締める『ブラック額装』

まずは王道から。
ご自宅のリビング、家族が一日に何度も通る壁を想定しています。
黒い額は、この絵にとって『縁取り』ではなく『地続き』です。
画面の中の黒と額の黒がつながるので、白の四角だけが壁から浮き上がって見えます。
結果として、61cm角という決して大きくないサイズが、実寸よりひとまわり大きく見える。
朝は、白がいちばん明るく光る時間です。
黒枠が窓からの光を吸ってくれるので、絵の白だけがすっきり立ち上がります。
夜、照明を落とすと今度は額と画面の境目が溶けて、黒い塊が壁に沈んでいくように見えます。
一枚で朝夕ふた通りの顔が出るので、リビングに置くと家族の会話が生まれやすい。
以前お客様から、待ちに待った絵を受け取って、ご主人の帰りを待ってから一緒に飾った、というお話を伺ったことがあります。
その晩、夫婦でずっと絵を眺めていたそうです。
この作品はまさに、そういう『飾った夜』に強い一枚だと思います。
「これ、何が爆発してるんだろう」から始まって、鼻に気づいた瞬間に笑いが起きる。
体温を足す『朱色額装』

白黒の作品に朱色の額?と思われるかもしれませんが、ここが一番のおすすめです。
想定しているのは、カフェやサロン、ギャラリーのような、人が座って過ごす商業空間です。
この絵には色がありません。
だからこそ、額に置いた一色が、そのまま作品の体温になります。
朱色は和の色で、日本人の目にはお祝いと危険の両方の記憶があります。
『Don't Taze Me Bro』というタイトルの、笑いと痛みが同居した感じと、この色の二面性がぴったり重なるんです。
昼間、窓からの自然光の下では、朱色が明るく跳ねて、店内の遠くからでも『あそこに何かある』と分かる目印になります。
夕方、照明が暖色に変わる時間帯には、朱色が落ち着いて深くなり、黒の線のほうが前に出てきます。
店主の方にお伝えしたいのは、この額装だとお客様が必ず一度立ち上がる、ということです。
遠くから見て『赤い四角』だと思っていたものが、近づくと犬の顔になる。
その落差が、席を立たせます。
一杯のコーヒーの時間に、ちょっとした発見が起きる。
商業空間にとって、これ以上の仕掛けはなかなかありません。
余白を伸ばす『オフホワイト額装』

3案目は、まったく逆の方向から。
書斎や寝室など、一人で過ごす静かな部屋を想定しています。
オフホワイトの額は、絵の白と壁の白のあいだに、もう一段やわらかい白を挟む役割をします。
すると画面の外にも余白が続いているように見えて、爆ぜた筆が壁の中まで飛んでいきそうに感じられます。
黒の線が、閉じ込められずに済むわけです。
実は私自身、自宅用に絵を買ったことがあります。
届くまでが待ち遠しくて、どこに飾るかを何度も考え直して、届いてからは思っていたより長い時間、その前に座っていました。
そのときに分かったのは、静かな部屋に置く絵ほど、額を主張させないほうが長く付き合えるということです。
朝、目が覚めて最初に視界に入るのがこの絵だと、白の面積のおかげで圧迫感がありません。
夜、デスクライトだけの部屋では、光の当たったところの黒だけが浮かび上がって、抽象画として楽しめます。
『爆ぜる一瞬』を、大声ではなく、こちらから覗きにいく飾り方です。
⑨ まとめ
最後にもう一度だけ。
この作品の正体は、爆ぜる一瞬です。
色を全部外したぶん、線の速さと圧力だけが、61cm角の中に生のまま残っています。
朝は笑い、夜は静まる。
飾った日から、毎日ちがう顔を見せてくれます。
そしてその顔は、美術館でも展示会でも見ることができません。
自分の部屋の光と、自分の一日の疲れを通してしか現れないからです。
それは、買った人だけが知る顔です。
エディションの欄には『なし』と書かれています。
刷られた1枚ではなく、筆で描かれた、世界にひとつだけの画面です。
同じものは二度と出てきませんし、次に市場へ現れるのがいつかは誰にも分かりません。
もし今、この絵の前で少し息が止まったのなら、その感覚のほうを信じてあげてください。
失われたら二度と手に入らないかもしれない機会を、確かな体験に変えてください。
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この作品は本物ですか?
はい、作家直筆サイン入りの本物です。本物証明書も付属いたします。当店は海外の提携ギャラリーから直接お取り寄せしており、この個体はまだ一度もコレクターの手に渡っていない新品未使用の状態です。
額装は変更できますか?
はい、額装のご相談を承っております。本作は額装済みでお届けしますが、設置されるお部屋の壁色や既存のインテリアに合わせて額縁をご相談いただけます。記事内でご紹介した3案以外のご希望も、お気軽にお問い合わせください。
送料はかかりますか?
送料につきましては商品ページに記載しております。本作は海外からのお取り寄せとなるため、お支払い確認後、4〜5週間前後でのご発送となります。
原画と版画では、何が違うのですか?
最大の違いは、世界に存在する枚数です。版画は限定部数のぶんだけ同じ絵柄が刷られますが、本作はエディションのない原画で、画面に直接筆で描かれた1点のみです。エバハートの筆がその日その場で動いた跡が、そのまま残っています。
白黒の作品は、部屋に飾ると地味になりませんか?
むしろ逆で、どんな壁色・どんな家具とも喧嘩しないのが白黒作品の強みです。色を持たないぶん、周囲のインテリアの色を邪魔しません。加えて本作は筆の勢いが非常に強いため、遠目には十分な存在感があり、近づくと細部が立ち上がる二段構えの見え方をします。
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