【風が止む時間を、壁に置く】ヒロ・ヤマガタ『黄山シリーズより 夕凪』シルクスクリーンのご紹介
ご来館ありがとうございます、やまアートミュージアム館長の山本です。
やまアートミュージアムは、私が運営するネットショップ『やまアートギャラリー』の魅力をご紹介するオンラインミュージアムです。
本日も心に残る一枚をお届けします。
本日ご紹介するのは、ヒロ・ヤマガタ(Hiro Yamagata/1948- )のシルクスクリーン『黄山シリーズより 夕凪』(限定300部・作家直筆サイン入り・画寸 縦50cm×横72cm)です。100色以上を重ねた鮮やかな色彩で知られる画家が、色をほとんど使わず、墨のような濃淡だけで中国・黄山の岩峰と松を描いた一枚。本作はいま在庫がなく、当ギャラリーが専属でお探しする作品です(ご相談無料)。
この記事でわかること
- 100色を重ねる画家がなぜ色を使わない絵を描いたのか(1986年『レイニーデイ』から続くモノトーンの系譜)
- 『黄山シリーズより 夕凪』の基本情報(限定300部・縦50cm×横72cm・作家直筆サイン入り)
- 黄山とはどんな山か(1990年ユネスコ世界複合遺産・千年以上描かれ続けてきた水墨画の題材)
- 「黄山四絶」のうち三つが、この一枚に収まっているという読み方
- にじみが起きないシルクスクリーンで、墨のような濃淡をどう作っているのか
- 画面の半分が白なのに壁で弱くならない理由と、朝と夜で入れ替わる見え方
- この作品に合う額装3パターンと、飾ったときの空間の変化

① 本日のご紹介作品
本日ご紹介するのは、ヒロ・ヤマガタ氏の『黄山シリーズより 夕凪』という作品です。
この絵を部屋に置くと、部屋の音量が一段下がります。
声が小さくなる、と言ったほうが近いかもしれません。
描かれているのは墨色の岩峰と、そこから横へ張り出した一本の松。
そして画面の半分近くを占める、白い霞です。
正直に言うと、私は最初、これがヒロ・ヤマガタの作品だと聞いて一度聞き返しました。
あの100色を重ねる画家が、色をほとんど使っていないんです。
けれど画面を追っていくうちに、これは色を捨てた絵ではないと分かってきました。
風が止まっているんです。
松の枝は横に伸びたまま動かず、霞は流れる途中で足を止めている。
今日この一枚の見方を知っていただけたら、静かな絵の選び方が変わると思います。
そして、この作品には特別なご案内があります。
いまお手元にご用意できる在庫はなく、当ギャラリーが「あなたの専属」としてお探しする一枚です。
すぐのお届けはお約束できません。
ただ、ご希望を先に伺っておけば、市場に現れた瞬間にまっ先にご連絡できます。
ご相談は無料です。
まずは、この止まった風の中に一緒に立ってみてください。
② 色を使わない日のヒロ・ヤマガタ
ヒロ・ヤマガタ(Hiro Yamagata/本名 山形博導)は、1948年に滋賀県米原に生まれた画家です。
高校時代、美術教師であった日本画家の椙村睦親に師事しました。
高校を卒業すると単身で上京し、広告会社でデザインやイラストの仕事に就きます。
1972年に渡欧し、翌1973年にはエコール・デ・ボザール(パリ国立美術学校)の聴講生となりました。
同じ年、ウィーンで個展を開いています。
1978年にロサンゼルスへ移住すると、シルクスクリーン作品による個展が大成功をおさめました。
一般的な多色刷りが20色前後とされるなかで、100色以上を重ねた鮮やかな作風です。
その後の歩みは、記念事業の歴史とほとんど重なります。
1983年、気球の浮かぶ空を描いた『エアーショー』が人類飛行200周年記念の祝典ポスター作品に選ばれました。
このころ確立された青が、のちに「ヤマガタ・ブルー」と呼ばれるようになります。
1986年には自由の女神100周年記念の公式ポスターを手がけました。
1991年にはバルセロナオリンピックと世界陸上、1996年には長野冬季オリンピックの公式ポスターを制作しています。
つまり、色でこの画家の名前を覚えた人のほうが、圧倒的に多いわけです。
ただ、その代表作を並べてみると、一枚だけ性格の違うものが混ざっています。
1986年の『レイニーデイ』です。
パリの雨空をノスタルジックに描いた一枚です。
モノトーンでありながら豊かな色彩感覚が表現された作品として、当時から注目されてきました。
色を並べる画家ではなく、色を減らしても持ちこたえる画家だということが、この時点で示されているんですね。
本作『夕凪』が属する『黄山シリーズ』(チャイニーズマウンテン)は、その流れの先にあります。
パリでも、ロサンゼルスでも、ディズニーでもない。
中国の山を、墨のような濃淡だけで描いたシリーズです。
③ 数字で見る『夕凪』
まず、この作品の基本情報を整理します。
- 作家:ヒロ・ヤマガタ(Hiro Yamagata/1948- )
- タイトル:黄山シリーズより 夕凪
- 技法:シルクスクリーン
- エディション:限定300部
- サイン:作家直筆サイン入り
- 画寸:縦50cm × 横72cm
- 体裁:あなた専用の新品額装にてご提供いたします
エディション番号だけは、あえて空欄にしてあります。
本作はこれからお探しする一枚で、何番の刷りが見つかるかは、そのときにならないと分からないからです。
確保できた時点で、状態とあわせて正直にお伝えします。
コレクターとして正直に言えることがあるとすれば、300という数字は、世界中に散らばったあとでは決して多くないんですよね。
④ 千年、絵に描かれ続けてきた山
・・・ただ、数字で語れるのはここまで。
ここからは、この絵に描かれている山の話に迫っていきたいと思います。
黄山は、中国の安徽省にある山岳景勝地です。
花崗岩の峰が断崖絶壁を作り、その割れ目から松が生えています。
1990年には、文化と自然の両方の価値を認められて、ユネスコの世界複合遺産に登録されました。
古くから「黄山を見ずして、山を見たというなかれ」と言われ、数えきれない文人が訪れた場所です。
水墨画と漢詩の題材として、千年以上にわたって描かれ続けてきました。
つまりこの山は、画家にとって最も手垢のついた題材のひとつなんです。
そこへ、色彩の画家として名を成した人が入っていく。
面白いのは、その結果として出てきた絵が、観光名所の絵になっていないことです。
画面を見てください。
左手前に、黒々とした岩峰がそそり立っています。
その岩の途中から松が一本、右へ大きく枝を伸ばしています。
枝先はほとんど水平で、幹よりも横への広がりのほうが長い。
右手には、もっと大きな岩の塊が画面を占めています。
こちらは丸みを帯びた稜線で、頂と斜面のいたるところに松が張りついています。
そして二つの岩の間に、白い谷があります。
その奥に、小さな峰がいくつも連なって、遠ざかるほど薄くなっていきます。
この絵の主役は、実は岩でも松でもなく、この白い谷なんです。
飾ってみると、そのことが毎日わかります。
朝、前を通ると、まず黒い松の形が目に入る。
夕方に同じ場所を通ると、今度は白い谷のほうが先に見えてくる。
見る時間で、主役が入れ替わる絵なんです。
⑤ 墨に見えて、墨ではない
さらにこの絵がすごいのは、この墨のような濃淡を、シルクスクリーンという版画で作っているところなんです。
どういうことか?というと、シルクスクリーンは色ごとに版を分け、一色ずつ刷り重ねていく技法です。
型紙を当てて、その上から一色だけを通す。
それを寸分の狂いもなく、何度も繰り返していく作業だと思ってください。
ここに、この作品の難所があります。
墨で描く場合、濃淡は筆に含ませる水の量で作れます。
紙の上で勝手ににじみ、勝手にぼけてくれる。
ところがシルクスクリーンは、インクを面で置く技法です。
にじみは起きません。
濃さは、版を何枚重ねるかで決めることになります。
この絵の岩肌を近くで見ると、そのことがよく分かります。
黒一色ではなく、濃い黒、中間の灰、薄い灰が、細い縦の筋になって並んでいるんですね。
一本一本が版の仕事です。
遠くの峰へいくほど灰が薄くなるのも、空気で薄れたのではなく、重ねる枚数を減らして作った薄さです。
これがどのくらい厄介か?というと、鉛筆の濃淡を、色の違うシールを何十枚も貼り重ねて再現するようなものです。
そして、いちばん手のかかっている場所は、実は何も刷っていない白い谷です。
版画の白は、刷らないことでしか作れません。
どこまでインクを置き、どこから置かないかを先に決めきってから、版を彫ることになります。
筆であれば迷いながら描けるところを、この技法では迷う前に決めなければならないんですね。
版画は、原画の安い代わりではありません。
作家が自分の表現を余すところなく届けるために選んだ、もうひとつの完成形です。
だからこそ、余白の直筆サインは「基準に届いた刷りだけが世に出た」という、作家自身の合格印になります。
⑥ 白は空白ではなく、音が消えた場所
・・・と、ここまでで版の話をお分かりいただけたかと思いますが、この一枚でいちばん語りたいのは、白の話です。
画面のおよそ半分が、ほとんど白です。
普通、これだけ白が多い絵は、壁に飾ると弱くなります。
ところがこの絵は、部屋の中でむしろ強い。
理由は、黒の置き方にあります。
いちばん濃い黒が、左上の松の葉に集まっているんです。
その黒が、隣の白をいっそう白く見せています。
強い黒を一箇所に集中させたぶん、残りの面積がすべて呼吸に変わる。
ドキッとする強さではなく、息がゆっくりになる静けさです。
時間帯によって、この白は表情を変えます。
朝、自然光が入る部屋では、白がやや青く冴えて、岩の輪郭がはっきり立ちます。
山の空気が冷たい時間の顔です。
ところが夜、照明を落とすと、白はわずかに黄色を帯びて温かくなります。
黒い岩は沈み、霞だけが部屋の中でぼんやり残ります。
朝は「岩の絵」、夜は「霞の絵」。
一枚で二つの顔を持っています。
じっと見ていると、この絵からは音がしません。
正確に言うと、音が引いたあとの空気の感触があります。
湿った岩の冷たさと、松の葉のかすかな乾いた匂い。
『夕凪』とは本来、夕方に海風と陸風が入れ替わるとき、風がぴたりと止む時間のことです。
海の言葉が山の絵についている理由を、私はこう見ています。
この画家が描きたかったのは景色ではなく、風が止んだその一瞬のほうだったのだと。
⑦ 四絶のうち、三つがこの一枚に
もうひとつ、知っておくと見え方が変わることがあります。
黄山には『黄山四絶』と呼ばれる四つの名物があります。
奇松、怪石、雲海、そして温泉です。
奇松とは、この山の固有種である黄山松のこと。
岩の割れ目に根を張り、強い生命力を持つ木として古くから尊ばれてきました。
樹齢100年を超えるものが約1万株あるといわれ、なかには枝を外へ差し出す形から『迎客松』と名づけられた木もあります。
怪石は、1億年にわたる浸食が作った花崗岩の奇岩。
雲海は、峰々の間にたまる霧です。
・・・もう、お気づきかもしれません。
この一枚には、四絶のうち三つが入っています。
左の岩から横へ伸びる松が、奇松。
その松を支える黒い岩と、右の大きな岩塊が、怪石。
そして二つの岩の間を埋める白が、雲海です。
観光写真を模写したのではなく、この山が千年かけて選ばれてきた理由のほうを、三つだけ抜き出して一枚に置いた。
私はそう見ています。
⑧ この絵には、どんな額が合う?
ここからは、この作品にどんな額装が合うのか、私のおすすめを3パターンご紹介させていただきます。
黒を外まで延ばす『ブラック額装』
まずは定番の、黒い額装です。
この作品に黒をおすすめする理由は、引き締めるためではありません。
延長するためです。
この絵でいちばん濃い黒は、左上の松の葉にあります。
そこに黒い額を回すと、絵の中の黒と額の黒が同じ仲間になって、その間に挟まれた白の面積が際立ってきます。
白い額でも成立しますが、それだと白が壁とつながって、絵の外へ流れ出てしまうんですね。
黒で外周を閉じると、白は絵の中に留まります。
おすすめは、家族が集まるリビングです。
朝の光が入る時間は、額が背景に沈んで、白い霞だけが浮いて見えます。
夜、あかりを落とすと、今度は額と松が一続きの黒になって、壁に穴が開いたように奥行きが出ます。
前を通ったお子さんが「この木、なんでこっち向いてるの」と聞いてくる。
そこから、崖の途中に生えた松がどうやって立っているのかという話になって、その日の食卓が少し長くなる。
そういう会話が生まれる一枚です。

夕方の色を外に置く『インディゴ額装』
墨色の絵に、さらに濃い色?と思われるかもしれませんが、この作品には深い藍を合わせる案をおすすめしたいんです。
理由は、この絵の灰色に、わずかな青みがあるからです。
黒でも茶でもない、冷たいほうへ寄った灰なんですね。
その外側に藍を置くと、絵の中の灰が「同じ系統の薄いほう」に変わります。
結果として、画面全体が夕方の空気の色にまとまります。
『夕凪』という題名が、額の側から補強されるわけです。
これが似合うのは、応接室や書斎です。
昼は窓の光で藍が澄み、夜は間接照明の下でほとんど黒に沈みます。
コレクターとして自宅に絵を掛けてみて実感しているのは、照明を落としたときに部屋そのものの格が変わってしまうことなんです。
私自身、届いた日に飾る場所を決めきれず、壁を変えては離れて眺め直した覚えがあります。
来客がソファに腰を下ろした瞬間、会話が半拍止まる。
そのあとで「これ、どこの山ですか」と聞かれる。
答えを言う前に、相手が絵の中の谷を目で追い始める組み合わせです。

松の緑を呼び戻す『抹茶色額装』
3つめは、少し意外に思われるかもしれませんが、抹茶色の額装です。
この絵には、緑が一切使われていません。
けれど描かれている松は、実際には緑の木です。
その見えない緑を額のほうに置いてやると、黒い葉が「緑を我慢している黒」に見えてきます。
鮮やかな緑ではなく、灰を含んだ抹茶色を選ぶのがポイントです。
だから絵の静けさを壊さず、生きている木だという事実だけを足してくれます。
おすすめは、和食の店やカフェ、待合の空間です。
昼は木のカウンターと並んで穏やかに落ち着き、夜は照明を受けて額の縁だけが淡く発光します。
席についたお客様が、注文したことを忘れて、しばらく絵の中の谷を眺めている。
料理が来たときに、少し背筋が伸びている。
そんな時間を作ってくれる組み合わせです。

⑨ まとめ
墨のような岩、横へ伸びたまま止まった松、そして画面の半分を占める白い谷。
色を重ねることで名を成した画家が、その色をほとんど置かずに描いた一枚です。
奇松、怪石、雲海。
黄山が千年かけて選ばれてきた理由が、三つだけ抜き出してここにあります。
そして、この絵の前では風が止まります。
朝は岩の絵、夜は霞の絵。
毎回、違うところで目が止まる。
それは、買った人だけが知る顔です。
この『黄山シリーズより 夕凪』は、いまはどこかで、次の持ち主を静かに待っている一枚です。
名品は、ある日ふいに、たいてい一度きり市場に現れます。
だからこそ、先に「私はこの絵を待っています」と教えておいていただくことで、当ギャラリーはその瞬間にまっ先にご連絡できます。
この作品を、あなたのためにお探しします。
ご相談は無料です。
しつこい営業は、いたしません。
すぐのご用意はお約束できませんが、あなたの一声があって初めて、この一枚は「あの方のための静けさだ」と、探し当てることができます。
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よくあるご質問
この作品は本物ですか?
はい、ヒロ・ヤマガタの本物のシルクスクリーンです。お探しした個体をご案内する際は、一点ごとに直筆サインの有無・エディション番号・状態と真贋を確認したうえでお伝えします。
いますぐ購入できますか?
いいえ、本作はいま在庫がなく、当ギャラリーが専属でお探しする「お探しリクエスト」の作品です。ご希望を伺ってから国内外のネットワークでお探しし、見つかり次第、価格とともにご連絡します。数ヶ月かかることも、見つからない場合もございますが、ご相談・調査は無料です。
限定300部のうち、何番の作品が届きますか?
エディション番号は、お探しした個体によって異なります。本作は300部で刷られた作品で、番号の指定は承れませんが、確保できた時点で番号と状態をあわせて正直にお伝えします。
ヒロ・ヤマガタなのに、なぜ色が使われていないのですか?
ヒロ・ヤマガタは100色以上を重ねた鮮やかな作風で知られる画家ですが、モノトーンの作品も残しています。代表作のひとつに数えられる1986年の『レイニーデイ』は、パリの雨空をノスタルジックに描いた、モノトーンでありながら豊かな色彩感覚が表現された作品として知られています。本作が属する『黄山シリーズ』(チャイニーズマウンテン)は、中国の山々を題材にしたシリーズです。
額装は変更できますか?
はい、額装のご相談を承っております。本記事でご紹介した3案以外でも、飾る部屋の壁色や家具に合わせてご提案いたします。お探しした個体をご案内する際に、あわせてご相談ください。
送料はかかりますか?
国内は送料無料でお届けしております。額装済みの作品を、専用の梱包でお送りします。
縦50cm×横72cmは、どんな壁に向いていますか?
横長の中判サイズですので、ソファの上、テレビボードの上、カウンター背面といった「横に広い壁」に向いています。画寸は縦50cm×横72cmですが、マットと額縁を回すと外寸はおおよそ横1m前後になり、壁の主役として成立する大きさです。白い余白が広い作品ですので、壁との間に少し距離を取って掛けると、霞の部分が空気として効いてきます。
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