【一分の空を持ち帰る】トム・エバハート『The Palm 6:03 PM』アクリル原画のご紹介

ご来館ありがとうございます、やまアートミュージアム館長の山本です。

やまアートミュージアムは、私が運営するネットショップ『やまアートギャラリー』の魅力をご紹介するオンラインミュージアムです。

本日も心に残る一枚をお届けします。

『The Palm 6:03 PM』は、トム・エバハートが縦56cm横76cmの紙に描いたアクリル原画です。エディションのない世界に1点のみの作品で、作者の直筆サインと本物証明書が付属します。黒いヤシの葉の向こうでショッキングピンクの空が群青へ沈む、日没の一分をとらえた画面が最大の特徴です。

この記事でわかること

  • タイトルに『6:03 PM』という時刻が入っている理由
  • エバハートが2000年にタヒチへ渡り、ラグーンの上で描き続けている背景
  • 貿易風とスクイーズボトルが生んだ、紙に絵具を直接置く描き方
  • 白い面に絵具が乗っていないという、この作品の明るさの正体
  • この作品に合う額装3案と、設置空間ごとの過ごし方

トム・エバハート『The Palm 6:03 PM』アクリル原画の全体像

① 本日のご紹介作品

本日ご紹介する作品は、トム・エバハート氏の『The Palm 6:03 PM』という作品です。

タイトルに、時刻が入っています。

夕方でも日暮れでもなく、六時三分。

見上げた視界の下半分は、もう黒いヤシの葉に埋まっています。

葉はとっくに色を手放しているのに、空だけがまだ燃えている。

一分しか続かない空です。

正直に言うと、初めてこの画面を見たとき、私は反射的に顔を上げていました。

絵を見ていたはずなのに、自分の部屋の天井を一度見てしまったんです。

今日この作品を知っていただけたら、夕方の空を見る目が少し変わると思います。

あの色は毎日出ているのに、たいていは通り過ぎているからです。

この作品は、私が運営するネットショップ『やまアートギャラリー』で取り扱い中です。

商品ページのURLは概要欄に記載しておりますので、実物の細部もぜひご覧ください。

② 世界でただ一人、あの犬を描ける画家

トム・エバハートは1952年、アメリカのワシントンD.C.に生まれた画家です。

イェール大学の美術・建築学部で学び、1976年に大学院課程を修了しています。

その後はパリのオランジュリー美術館でも研究を続けました。

出自は、正統な西洋絵画の側にいた人です。

『ピーナッツ』の原作者チャールズ・シュルツと出会ったのは1980年でした。

カリフォルニア州サンタローザにあった、シュルツのスタジオです。

そして1991年、エバハートが『ピーナッツ』の題材を使って制作してよいという法的な取り決めが交わされます。

しかも彼の生涯にわたって、という内容でした。

シュルツ本人から教えを受け、かつ正式な許諾を持つ唯一のファインアーティスト。

それがこの人の立ち位置です。

1990年にはルーヴル美術館でも作品が展示されています。

ただ、今日の一枚を見るうえで大事なのは、もうひとつの場所のほうです。

2000年、エバハートは親友だったシュルツを亡くしました。

その同じ年に、彼は南太平洋のタヒチへ渡り、二軒目のアトリエを構えます。

以来25年、彼が空を見上げてきたのは、その島の上です。

③ 数字で見る『The Palm 6:03 PM』

  • 作者:トム・エバハート(Tom Everhart)
  • タイトル:The Palm 6:03 PM
  • 技法:アクリル原画
  • エディション:なし(世界に1点のみ)
  • サイズ:縦56cm × 横76cm
  • 署名:作者の直筆サインあり
  • 付属:本物証明書
  • 体裁:額装済み
  • 状態:新品未使用(提携ギャラリー保管品・コレクター未通過)

見ていただきたいのは、エディションの欄です。

『なし』と書かれています。

刷られた一枚ではなく、紙に直接置かれた絵具で出来た画面だということです。

同じものは、世界のどこにも存在しません。

コレクターとして正直に言えることがあるとすれば、原画には『次の機会』という言葉が通用しません。

・・・ただ、数字で語れるのはここまで。

ここからは、この時刻が何を意味しているのか。

その話に入っていきたいと思います。

④ ラグーンの上のアトリエと、午後六時三分

エバハートがタヒチへ渡った理由を、本人がこう説明しています。

2000年に親友のシュルツを失い、外の世界をまったく新しいやり方で感じ、見る必要に迫られた、と。

そして初めてタヒチのラグーンに入ったとき、子守唄が子どもにもたらすような、内側の鎮まりが即座に起きたと語っています。

(出典:作家ステートメント『Lagoon Lullabies』)

彼のアトリエは、そのラグーンの水面から3メートルほどの高さに、柱で建てられています。

夜になると、スタジオの下の灯りが水面に映り、その光がもう一度上へ返って、茅葺きの天井で踊るそうです。

つまりこの画家は、四半世紀のあいだ、光が水と天井を往復する部屋で眠ってきました。

タイトルに時刻を入れる作品が、エバハートには他にもあります。

たとえば『The Palm 9:02 PM』は同じくアクリル原画として画廊で扱われ、『Coconut Radio』の系列に置かれています。

(出典:Atkinson Fine Art 作品情報)

その『Coconut Radio』というシリーズについて、作家はコミュニケーションを通じて学ぶことの大切さを扱ったものだと述べています。

(出典:作家ステートメント『Lagoon Lullabies』内の記述)

ですから六時三分という数字は、作品名の飾りではなく、記録に近いものだと私は見ています。

何時何分にその空だったのか。

日付は書かれていないのに、時刻だけが残されている。

赤道に近い島の日没は、驚くほど速いそうです。

燃えるような色が出たと思ったら、数分で群青に沈んでいく。

だから六時三分なのだと、この画面は言っています。

飾った方の暮らしでいえば、たとえば仕事を終えて玄関を開け、まだ電気をつける前の部屋にこの絵があるとします。

外が暗くなりかけている数分と、絵の中の数分が、同じ時刻でそろう日が来ます。

一年に何度かしかない偶然ですが、それが起きた晩のことは、たぶん忘れません。

⑤ 白いところには、何も塗られていない

さらに面白いのは、その『一分の空』を、紙の上でどう留めたかというところなんです。

タヒチのアトリエでの制作について、作家はこんな話をしています。

あの島で唯一つらいのは、強い貿易風だ、と。

ラグーンの水で溶いた絵具が、筆から紙に届く前に風に持っていかれてしまうのだそうです。

そこで彼が見つけた道具が、レストランで使う調味料のスクイーズボトルでした。

筆で運ぶのをやめて、絵具を紙の上へ直接置いてしまう。

その結果、厚手の紙の表面に、島のトカゲの肌のような質感が生まれたと本人が語っています。

(出典:作家ステートメント『Tahitian Hipsters』)

本作の黒い葉も、筆で引いたというより、一息に置かれた線に見えます。

ヤシの葉が一枚ずつ、根元から先へ、途中で止まらずに抜けている。

そして注目していただきたいのが、白い部分です。

スヌーピーの顔の白は、白い絵具ではありません。

紙そのものが、塗られずに残されています。

だから画面の白は、上に乗った色ではなく、下から出てくる明るさとして見えます。

夕暮れの絵なのに沈んで見えないのは、光源が絵具側ではなく紙側にあるからです。

一度置いたら直せない画材で、直せない線を引き、いちばん広い面積は最初から触らずに残す。

一分で終わる空を写し取るには、この速度しかなかったのだと思います。

⑥ ピンクが落ちて、群青が上がる

ここからは、色の話をさせてください。

画面の上端に、ショッキングピンクの帯があります。

その下に、群青。

境目のあたりに、黄色と黄緑の粒が弾けています。

この並び順が、そのまま時間の進み方になっています。

ピンクは落ちていく色で、群青は上がってくる色です。

日没の空でも、暖色は下へ沈み、青は上から降りてきます。

つまり一枚の絵の中で、時計が動いている。

その真下に、赤い唇がひとつあります。

画面の中で、いちばん強い赤はここだけです。

周りの色が全部冷めていく中で、この一点だけが体温を持っています。

見ていると、なぜか目が先にそこへ行く。

ドキッとする、というほど大きな驚きではないのですが、視線がそこで引っかかって止まります。

黒いヤシの葉は、影ではなく静けさの役割です。

音でいえば、周りの音が消えていく感じに近い。

葉の黒が増えるほど、空の色が遠くの音楽みたいに聞こえてきます。

そして白。

この絵で息をつける場所は、スヌーピーの顔の白い面だけです。

色が動いて、時計が回って、赤が刺さって、その全部を受け止める余白がここにあります。

騒がしい画面なのに見ていて疲れないのは、呼吸の着地点が画面の真ん中に確保されているからだと感じられます。

見え方は、時間帯でかなり変わります。

朝の自然光の下では、紙の白が勝ちます。

ピンクも群青も明るく澄んで、ヤシの葉の黒がグレーに近づき、画面全体が軽くなる。

ところが夜、照明を一段落とすと、順番が入れ替わります。

白が奥へ引いて、黒い葉が前に出てきて、上の空だけが残光のように浮かびます。

絵の中の時刻と、部屋の時刻が近づいてくる時間帯です。

近くで見ると、置かれた絵具の縁がわずかに盛り上がっているのが分かります。

指を触れなくても、乾いた盛り上がりの硬さが目で分かる。

写真には写らない部分で、原画を迎えた方だけが知る手ざわりです。

⑧ この絵にはどんな額が合う?

ここからは、この作品にどんな額装が合うのか、私のおすすめを3パターンご紹介させていただきます。

白を伸ばす『ホワイト額装』

『ホワイト額装』×リビング設置イメージ

まずは王道から。

ご自宅のリビング、家族が一日に何度も通る壁を想定しています。

この作品の主役は、じつは紙の白です。

白い額を回すと、画面の外にも同じ明るさが続き、スヌーピーの顔がもう一段ひろがって見えます。

上端のピンクと群青は、白に挟まれたときにいちばん濁りません。

朝は、この白がよく働きます。

窓からの光を額が受けて、絵の中の空が澄んだ色のまま立ち上がります。

夕方、部屋の照明が暖色に変わると、今度は白い額がほんのり色を拾って、画面と壁の境目がやわらかくほどけます。

一枚で朝夕ふた通りの顔が出るので、リビングに置くと家族の会話が生まれやすい。

以前お客様から、待ちに待った絵を受け取り、ご主人の帰りを待ってから一緒に飾った、というお話を伺ったことがあります。

その晩は、夫婦でずっと絵を眺めていたそうです。

この作品も、そういう『飾った夜』に強い一枚だと思います。

「この時間、外もこんな色だったね」から始まる会話が、たぶん最初の晩に起きます。

夜を先に置く『インディゴ額装』

『インディゴ額装』×寝室・書斎設置イメージ

2案目は、作品の中の色をそのまま額に持ってくる案です。

寝室や、一人で過ごす書斎を想定しています。

画面の上にある群青を、額のほうへ拡張してしまう考え方です。

こうすると、絵の周囲がすでに夜になっていて、その中で空の一分だけがまだ明るい、という順番に見えます。

作品のタイトルが指している時刻と、部屋の感じ方が一致します。

昼間は、深い藍がピンクを引き締めます。

ピンクは明るい壁の前だと騒がしく見えることがあるのですが、藍が回ると急に上品になる。

夜、ベッドサイドの灯りだけにすると、額と壁の境目が沈み、絵の中の空が浮かび上がります。

私自身、自宅用に絵を買ったことがあります。

届くまでが待ち遠しくて、どこに飾るかを何度も考え直して、届いてからは思っていたより長い時間、その前に座っていました。

そのとき分かったのは、寝る前に見る絵は、明るい額より暗い額のほうが長く付き合えるということです。

一日の終わりに、もう一度六時三分に戻れる場所が、枕元にできます。

体温を足す『朱色額装』

『朱色額装』×カフェ設置イメージ

赤い唇がある作品に、また赤い額?と思われるかもしれませんが、ここが一番のおすすめです。

想定しているのは、カフェやサロンのような、人が座って過ごす商業空間です。

この画面で唯一の暖色は、中央の唇ひとつだけでした。

朱色の額を回すと、その一点と額が呼応して、画面の中に温度の通り道ができます。

離れた席からは『赤い四角』にしか見えません。

ところが近づくと、黒い茂みの奥に犬の顔が浮かび、赤の正体が唇だと分かる。

この落差が、お客様を一度立ち上がらせます。

昼間、自然光の下では朱色が明るく跳ねて、店内の奥からでも目印になります。

夕方、照明が落ちる時間には朱色が深く沈み、上端の群青と釣り合って、店の空気がひとつ静かになります。

コーヒー一杯の時間に、小さな発見がひとつ起きる。

商業空間にとって、これ以上の仕掛けはなかなかありません。

⑨ まとめ

最後にもう一度だけ。

この作品の正体は、一分の空です。

赤道に近い島で、数分だけ出て、すぐ群青に沈んでしまう色を、直せない画材で紙に留めたものです。

朝は軽く、夜は残光になる。

飾った日から、毎日ちがう顔を見せてくれます。

そしてその顔は、美術館でも展示会でも見ることができません。

自分の部屋の光と、自分の一日の終わり方を通してしか現れないからです。

それは、買った人だけが知る顔です。

エディションの欄には『なし』と書かれていました。

刷られた一枚ではなく、世界にひとつだけの画面です。

同じ空は二度と出ませんし、次に市場へ現れるのがいつかは誰にも分かりません。

もし今、この絵を見て一度天井を見上げたのなら、その反射のほうを信じてあげてください。

失われたら二度と手に入らないかもしれない機会を、確かな体験に変えてください。

この作品の詳細・ご購入はこちらから

やまアートギャラリーで見る

作品のご不明点や額装のご相談は、お気軽にお問い合わせください。

よくあるご質問

この作品は本物ですか?

はい、作家直筆サイン入りの本物です。本物証明書が付属し、当店は海外の提携ギャラリーから直接お取り寄せしております。トム・エバハートの原画・版画を継続して取り扱っており、仕入経路の確認できる作品のみをご案内しています。

額装は変更できますか?

はい、額装のご相談を承っております。本作は額装済みでのお届けですが、設置されるお部屋の壁色や家具に合わせた額装のご提案も可能です。お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

送料はかかりますか?

国内送料は当店が負担いたします。海外の提携ギャラリーからのお取り寄せとなるため、ご入金確認後4〜5週間前後でのご発送となります。配送日のご希望がありましたら、事前にお知らせください。

原画と版画では、何がいちばん違いますか?

手に入る機会の数が違います。版画は同じ画面が限定部数だけ存在しますが、本作のような原画はエディションが『なし』、つまり世界に1点のみです。紙に直接置かれた絵具の盛り上がりや、線が一息で抜けた跡は、その1枚にしか残りません。

タイトルの『6:03 PM』には意味がありますか?

作品が捉えた時刻を指していると考えられます。エバハートには『The Palm 9:02 PM』のように時刻を添えた同系の作品があり、赤道に近いタヒチの日没は数分で色が移ろいます。日付ではなく時刻だけが記されている点が、この画面の主題を示しています。