【夜の壁に窓をひらく】トレンツ・リャド『ロルカの詩II』シルクスクリーンのご紹介

ご来館ありがとうございます、やまアートミュージアム館長の山本です。

やまアートミュージアムは、私が運営するネットショップ『やまアートギャラリー』の魅力をご紹介するオンラインミュージアムです。

本日も心に残る一枚をお届けします。

本日ご紹介するのは、トレンツ・リャド(J. Torrents Lladó/1946-1993)のシルクスクリーン『ロルカの詩II』(限定350部・サイン有り・画寸 縦61cm×横61cm)です。夜の壁のような濃紺の面にロルカの詩が手書きで書きつけられ、その中央に、緑と黄金の光に満ちた庭へ続く小さな窓がひとつだけ開いています。本作はいま在庫がなく、当ギャラリーが専属でお探しする作品です(ご相談無料)。

この記事でわかること

  • 『ロルカの詩II』の基本情報(シルクスクリーン・限定350部・サイン有り・縦61cm×横61cm)
  • 画面を埋める手書き文字が、ロルカの詩集『カンシオネス』所収「ルシア・マルティネス」であること
  • 詩の一行「光から、影へ」が、そのまま画面の構造に翻訳されていること
  • シルクスクリーンでいちばん難しいのが、庭の多色ではなく周囲の濃紺のベタ面だという理由
  • 紺が黒ではなく青であることが、この絵の奥行きを決めていること
  • 画家がアトリエを構えたパルマ旧市街に、いまも彼の美術館が残っていること
  • この作品に合う額装3パターンと、飾ったときの空間の変化

トレンツ・リャド『ロルカの詩II』シルクスクリーンの全体像。夜のような濃紺の面にロルカの詩が手書きされ、中央の小さな窓の奥に緑と黄金の光に満ちた庭が見える

① 本日のご紹介作品

本日ご紹介するのは、トレンツ・リャド氏の『ロルカの詩II』という作品です。

画面のほとんどが、濃い紺色で埋まっています。

夜の壁のような面に、手書きの文字がびっしりと書きつけられていて、その真ん中に、小さな四角い窓がひとつだけ開いている。

窓の奥には、緑と黄金の光に満ちた庭が見えます。

夜の壁に、窓がひとつ。

正直に言うと、私はこの絵を初めて見たとき、体が勝手に前かがみになりました。

窓が小さいので、のぞき込まないと中が見えないんです。

絵の前で前かがみになる、という経験は、そう多くありません。

今日この「夜の壁に開いた窓」という見方を持ち帰っていただけたら、暗い絵の選び方が変わると思います。

そして、この作品には特別なご案内があります。

いまお手元にご用意できる在庫はなく、当ギャラリーが「あなたの専属」としてお探しする一枚です。

すぐのお届けはお約束できません。

見つかるまでに数ヶ月かかることも、もっと先になることもあります。

ただ、ご希望を先に伺っておけば、市場に現れた瞬間にまっ先にご連絡できます。

ご相談は無料です。

まずは、この小さな窓を一緒にのぞき込んでみてください。

② 地中海の光に住みついた画家

トレンツ・リャド(J. Torrents Lladó)は、1946年にスペインのバダローナに生まれた画家です。

絵を始めたのは9歳のとき、アカデミア・バリスで素描を学んだのが最初でした。

やがて美術学校で頭角を現し、19歳で助教授に任じられています。

22歳のとき、彼はパルマ・デ・マヨルカにアトリエを構えました。

地中海に浮かぶこの島を拠点に、ヨーロッパ、北米、ブラジルへと画材を探して旅を続けます。

その過程で、画風は抽象から具象へと移っていきました。

光を描く画家として知られるようになり、1993年、そのマヨルカ島で生涯を終えています。

・・・ただ、経歴で語れるのはここまでです。

ここからは、その光の画家が、なぜ画面のほとんどを闇で塗りつぶしたのか、という話に入っていきます。

③ 数字で見る『ロルカの詩II』

まず、この作品の基本情報を整理します。

  • 作家:トレンツ・リャド(J. Torrents Lladó/1946-1993)
  • タイトル:ロルカの詩II
  • 技法:シルクスクリーン
  • エディション:限定350部
  • サイン:サイン有り
  • 画寸:縦61cm × 横61cm

世界に350部。

正方形の画面で、縦も横も61cmですから、壁に掛けるとちょうど一抱えほどの大きさになります。

コレクターとして正直に言えることがあるとすれば、正方形の版画は、そもそも数が少ないんですね。

横長の風景画や縦長の人物画と違って、家具の上の余白に「はまる」寸法なのに、市場ではなかなか回ってきません。

・・・ただ、数字で語れるのはここまで。

ここからは、この画面に書かれた文字が何なのか、という話に迫っていきたいと思います。

④ 壁に書かれていたのは、恋の詩だった

濃紺の面を埋めている手書きの文字は、模様ではありません。

スペインの詩人、フェデリコ・ガルシア・ロルカの詩です。

詩集『カンシオネス』(1921-1924年)に収められた「ルシア・マルティネス」という一篇が、画面の上下に書きつけられています。

画面のいちばん下には、F. G. LORCA という署名まで書き添えられています。

この詩は、こんな一行で始まり、そして同じ一行で閉じられます。

Umbría de seda roja.

赤い絹の、陰り。

そして詩の中ほどに、この絵の仕掛けをそのまま言い当てたような一行があります。

van de la luz a la sombra.

光から、影へ。

トレンツ・リャドは、この一行を絵に翻訳したのだと感じられます。

画面の外側は影で、中央の窓の奥だけが光です。

見る人の視線は、詩のとおりに光から影へ、あるいは影から光へと往復することになります。

タイトルの II という数字は、彼がロルカの詩に何度も向き合ったことをうかがわせます。

そして、この絵を家に飾った方から聞く話で私がいちばん好きなのは、夜になると窓の中の庭だけが起きている、というものです。

⑤ いちばん難しいのは、広い紺色のほうだった

さて、ここからは技法の話です。

「夜の壁に、窓がひとつ」というこの構造は、実はシルクスクリーンという技法にとって、いちばん手強い形をしています。

どういうことか?というと、難しいのは色とりどりの庭ではなく、その周りの、何も描かれていない濃紺の面のほうなんです。

シルクスクリーンは、絵の具を塗る技法ではありません。

絹の網に孔を開けて、その孔からインクを紙の上へ押し出す技法です。

イメージとしては、お風呂場の鏡についた水を、ゴムのワイパーで一気に引く、あの動作に近い。

ワイパーを引く速さが少しでも変われば、鏡には筋が残りますよね。

同じことが、版画の上でも起きます。

これがどのくらいシビアか?というと、広いベタ面ほど、その筋が容赦なく出るんです。

小さな面積なら勢いで押し切れますが、61cm四方の大半を占める紺色は、最初から最後まで同じ力で引き切らなければなりません。

1回でも力がゆるめば、夜が濁ります。

そして濁った夜の中では、窓の光は光として立ち上がってくれません。

さらに、その紺の上に、手書きの文字がのっています。

文字の細い線は、版の孔としてはいちばん細い部類です。

太すぎればインクが滲んで詩が読めなくなり、細すぎれば途中で線が切れてしまう。

濃紺のベタと、髪の毛のような文字と、庭の多色。

性格のまったく違う三つの仕事を、同じ一枚の紙の上で成立させているわけです。

版画は、原画の安い代わりではありません。

作家が自分の表現を余すところなく届けるために選んだ、もうひとつの完成形です。

だからこそエディションナンバーは、基準に届いた刷りだけが世に出たという、作家自身の合格印になるんですね。

⑥ 紺は音を吸い、窓だけが息をしている

ここからは、色が心に何をしているのかの話です。

この絵でいちばん広い面積を持っているのは、言うまでもなく、あの濃紺です。

黒ではなく、青であることが大事なんですね。

黒だと、そこで終わってしまいます。

青の闇には奥行きがあって、まだ向こう側がありそうに感じられます。

そこへ、窓の中の色が対置されます。

若葉の緑、糸杉の深緑、そして中央に差し込む黄金色。

面積でいえば、画面の1割にも満たない小さな四角です。

それなのに目が吸い寄せられるのは、周りが徹底して沈めてあるからだと感じられます。

音でたとえるなら、濃紺は部屋の音を吸う分厚いカーテンです。

そのカーテンの隙間から、庭の鳥の声だけが聞こえてくる。

朝、カーテンを開けた直後に見ると、この絵はまず窓の中の緑から目に入ります。

自然光が入ると、紺が少しだけ明るく持ち上がって、書かれた文字が読めるようになります。

夜、照明を落とすと、まったく別の絵になります。

紺が壁の暗さと溶け合って輪郭を失い、窓の中の庭だけが、そこに浮かんで残ります。

絵が壁から消えて、窓だけが残る。

一日の中で、絵の面積が変わって見える一枚なんです。

そして近くで寄ると、また違う顔が出てきます。

濃紺だと思っていた面に、青の層がいくつも重なっていることに気づきます。

美術館や展示会では、そこまで顔を近づけることはできません。

⑦ パルマの旧市街に、画家の家が残っている

もうひとつ、この絵を見るときの手がかりをお伝えします。

トレンツ・リャドがアトリエを構えたパルマ・デ・マヨルカの旧市街には、いまも彼の名を冠した美術館があります。

ポルテーリャ通り9番地。

2002年にこの場所へ定着し、油彩、素描、水彩、彫刻、そして本人の私物まで、約120点が常設で展示されています。

画家が実際に絵を描いていた場所が、そのまま公開されているわけですね。

ここで、もう一度この絵を思い出してください。

窓の奥に見えているのは、糸杉と、木漏れ日と、石の匂いがしそうな庭です。

マヨルカの中庭は、外の強い日射しを石の壁で遮って、内側にだけ緑と光をためる造りをしています。

暗い壁の向こうに明るい庭がある、というこの絵の構造は、彼が毎日出入りしていた建物そのものの構造でもあったのだと感じられます。

⑧ この絵には、どんな額が合う?

ここからは、この作品にどんな額装が合うのか、私のおすすめを3パターンご紹介させていただきます。

窓をひらく『ホワイト額装』

まずは定番の、白い額装です。

この作品に白をおすすめする理由は、無難だからではありません。

壁のほうを明るくして、絵を本物の窓にするためです。

この絵はそれ自体が暗い面ですから、暗い額で囲むと、壁に黒い穴が開いたように見えてしまいます。

白い額を回すと、額のところで一度光が戻り、そのうえで紺の闇が始まります。

外が明るい室内から、暗い部屋の窓をのぞき込んでいる。

そういう位置関係が生まれるんですね。

「夜の壁に、窓がひとつ」という構造が、額の外側まで延長されるわけです。

おすすめは、家族が集まるリビングです。

朝の光の下では、白い額が壁と一続きになって、窓の中の緑だけが先に目を覚まします。

夜、電球色の明かりをつけると、白がクリーム色に寄って、紺との境目がやわらぎます。

私自身、自宅に絵を掛けてみて実感しているのは、飾る前に一度、近くで見ておくと、そのあとの眺め方が変わるということなんです。

遠目には一色に見えていた面が、近づくと何層もの色でできていると分かる。

それを知ってから壁に戻すと、毎朝その前を通るたびに、目が勝手に確かめに行くようになります。

トレンツ・リャド『ロルカの詩II』の『ホワイト額装』×リビング設置イメージ

夜を延ばす『インディゴ額装』

次は変化球です。

紺色の作品に、なんでまた紺色の額?と思われるかもしれませんが、これには理由があります。

この絵の紺を、額のところで切らずに、そのまま外へ延ばしてしまう案です。

白い額が「窓の外から見る」設計だとすれば、こちらは「暗い部屋の中に、自分も一緒に入ってしまう」設計になります。

額と作品の境目が曖昧になるので、壁に浮かんでいるのは、もう額ではなく窓そのものになります。

おすすめは、応接室や、少し改まった空間です。

昼間は、額と作品がひと続きの深い面として静かに収まっています。

夜、スポットライトを一灯だけ落とすと、光の当たった窓の中だけが宝石のように残って、周りは闇に沈みます。

お客様をお通ししたとき、多くの方がまず黙って、それから「これ、何が見えているんですか」と一歩近づいてこられる。

説明を始める前に、相手のほうから距離を詰めてくれる絵は、そう多くありません。

トレンツ・リャド『ロルカの詩II』の『インディゴ額装』×応接室設置イメージ

灯りを拾う『アンティークゴールド額装』

3案目は、窓の中から色を借りてくる方法です。

この絵の中央には、木漏れ日の黄金色が差し込んでいます。

面積としてはほんのわずかですが、この絵で唯一、温度を持っている色です。

その色を額に拾わせると、絵の中の光が外側にもう一度反射して、画面全体がわずかに暖まって見えてきます。

ぎらついた金ではなく、少しくすんだアンティークの金であることが大事なんですね。

新しい金だと、紺の静けさに勝ってしまいます。

おすすめは、カフェや、小さなお店の壁です。

昼は窓からの自然光で、額の金がほとんど目立ちません。

夕方、店内の照明が入ると、額の縁だけがすっと浮かび上がってきます。

一日の終わりに、絵のほうから「そろそろ夜ですよ」と言ってくるような額装です。

カウンターに座ったお客様が、帰り際にふと振り返って見ていく。

そういう置き方に向いている一枚だと感じられます。

トレンツ・リャド『ロルカの詩II』の『アンティークゴールド額装』×カフェ設置イメージ

⑨ まとめ

夜の壁のような濃紺、びっしりと書きつけられたロルカの詩、そして中央にひとつだけ開いた、光の庭へ続く窓。

光から影へ、と詩人が書いた一行を、画家がそのまま画面の構造に翻訳した一枚です。

朝は文字の絵、夜は窓だけの絵。

飾った部屋の明るさによって、絵の面積そのものが変わって見えます。

それは、買った人だけが知る顔です。

この『ロルカの詩II』は、いまはどこかで、次の持ち主を静かに待っている一枚です。

名品は、ある日ふいに、たいてい一度きり市場に現れます。

だからこそ、先に「私はこの絵を待っています」と教えておいていただくことで、当ギャラリーはその瞬間にまっ先にご連絡できます。

この作品を、あなたのためにお探しします。ご相談は無料です。しつこい営業は、いたしません。

すぐのご用意はお約束できませんが、あなたの一声があって初めて、この一枚は「あの方のための夜だ」と、探し当てることができます。

この作品を、あなたのために専属でお探しします

やまアートギャラリーで無料リクエストする

すぐのご用意はお約束できませんが、ご希望を伺っておくことで、市場に現れた瞬間にまっ先にご連絡できます。ご相談は無料です。額装のご相談もお気軽にお問い合わせください。

よくあるご質問

この作品は本物ですか?

はい、当ギャラリーがお探しするのは、作家のサインが入った正規のエディション作品のみです。本作は限定350部のシルクスクリーンで、当ギャラリーは古物商許可を得て国内外のオークション・ディーラー網から仕入れております。ただし本作はお探しリクエスト品のため、エディション番号・状態・付属品はお探しした個体によって異なります。確保できた時点で、すべて正直にお伝えしたうえでご判断いただきます。

画面いっぱいに書かれている文字は何ですか?

スペインの詩人フェデリコ・ガルシア・ロルカの詩です。詩集『カンシオネス』(1921-1924年)に収められた「ルシア・マルティネス」という一篇が画面の上下に手書きで書きつけられ、いちばん下には F. G. LORCA という署名まで添えられています。「Umbría de seda roja(赤い絹の、陰り)」で始まり、同じ一行で閉じられる詩です。

縦61cm×横61cmの正方形は、どんな壁に向いていますか?

チェストやサイドボードの上、ソファ脇の壁など、縦にも横にも余白がある壁に向いています。画寸は縦横とも61cmですが、マットと額縁を回すと外寸はおおよそ80cm前後になります。正方形は上下左右のバランスが取りやすく、左右対称の壁面にも一点で収まります。中央の窓が絵の中心にあるため、目線の高さに窓が来るよう掛けると、のぞき込む姿勢が自然に生まれます。

額装は変更できますか?

はい、額装のご相談を承っております。本記事でご紹介した3案以外でも、飾るお部屋の壁色や家具に合わせてご提案いたします。お探しした個体をご案内する際に、あわせてご相談ください。

送料はかかりますか?

国内は送料無料でお届けしております。額装済みの作品を、専用の梱包でお送りします。